あまり期待せずに見たんだけど、面白かったしブッ刺さった。こういうえげつない話は大好きだし、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットという私にはたいへん美味しいキャストで演技合戦が堪能出来たのも嬉しい(ちなみに私は『タイタニック』をまだちゃんと見たことがない)。二人とも圧巻でした。
続きを読む『レヴェナント:蘇えりし者』感想
すごい映画だった。冒頭の森の中の水辺を歩くシーンですでに引き込まれたけど、エマニュエル・ルベツキによって切り取られた映像群が素晴らしい。『ゼロ・グラビティ』や『バードマン』でも撮っていた撮影監督だと後で知って納得。今回も印象的な長回しのシーンが多く、キャラクターの体験がそのままこちらにも伝わってくるような画の迫力がすごい。特にこの作品は「自然」が重要に思えたので、そんなものを圧倒的な説得力で見せてくるから溜息が出る。貴重な映像体験でした。震えた。ちなみに好きな画は川岸に辿り着いたグラスが見た血が流れる川の中の妻の遺体の夢で、一瞬のシーンなんだけど惹きつけられた。
続きを読む『ジュラシック・ワールド』感想
このシリーズはずっと見てきたけど、一作目の『ジュラパ』以外はストレスが溜まるばかりだったので今回も見るかどうか悩んだ。この映画は「無駄にアクティブな無能」を味方に置くことでピンチを演出するので、見てもどうせまたストレスが溜まるだけなんじゃないかという予感があった。いい加減学習しろと言いたくもなるけど、毎回文句を言いつつスパッと『ジュラパ』の世界と縁を切ることが出来ないでいる私も学習出来てないので、偉そうなことは言えない。ただ、言い訳になるけどこのシリーズを見始めたのは「格好良いクリプラが見たい」という理由もあったので、結局覚悟を決めて鑑賞した。ら、意外にも面白かった。序盤のラプトルにオーウェンが「待て」をかける有名なシーンが見れただけで満足していたけど、その後も最後まで楽しめてしまったのは予想外。アホも相変わらずいるけど『ロスワ』や『ジュラパ3』のイライラに比べたら天国だった。いつもの「脱走した恐竜から逃げる話」でしかないのに、イライラさせられない『ジュラパ』がこんなに素晴らしいものだったとは!
続きを読む『アイアン・ジャイアント』感想
『M:I』シリーズは『ゴースト・プロトコル』が一番好きで、ブラッド・バード監督作品の中でも名作と言われる『アイアン・ジャイアント』も前から興味があったんだけど、話に聞いていた通りすごく良かった。クライマックスではポロポロ泣いてしまった。基本的には少年とロボットの友情物語で、ベタなキャラクター配置にベタなテーマでベタなストーリーが展開されるんだけど、むしろそこがいい作品でした。あとキャラクターの表情が魅力的なんだよな。特にロボットのアイアン・ジャイアントの感情表現が秀逸で、言動がいちいち可愛らしい。
続きを読む『チャーリーとチョコレート工場』感想
『スーサイド・スクワッド』感想
底の浅い映画だった。なーんもかんもが薄い。致命的なのはキャラクターが立ってないところで、比較的目立っていたデッドショット、ハーレイ・クイン、ジョーカーの三人ですらパンチが足りておらず悪党というにはしょっぱい。アクションもつまらないし、それぞれの能力を活かせてないからタスク・フォースXである意味がない。ディアブロの使い方も中途半端。そもそもエンチャントレスの目的や能力がよく分からないのもアレ。一番キャラが立ってたと言えるのがウォラーなのは何ともな。ことあるごとにエンチャントレスの心臓をプスプスやってるのはこえーよ。
マゴロビのキャッチーなビジュアルが良かったから最後まで見れた感はあるけど、ハーレイのキャラクターも薄いので本当に外見だけだった。ショーウィンドウを壊してバッグを取るシーンも取ってつけたような悪党アピールが辛い。
というかジョーカーは『ダークナイト』を見たことで「孤独だからこその強力無比な魅力の持ち主」というイメージが定着していたので、違う作品とはいえ彼女がいたことにショックを受けたんだけど、そんな自分が面白かった。いやでもここからあの理想的なヴィランになっていく、というならまあ。まだ完成に至っていないというか、若いジョーカーっぽさはあったかなと。そもそも出番が少ないというのもあるけど、彼はメンバーじゃないからしゃーないか。
尻を披露してるマゴロビを差し置いてフラッグ大佐がヒロインやってたのは面白かったです。
『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』感想
粗もあるけど面白かった。初登場のDCEU版バットマンの背景、スーパーマンの苦悩、ルーサーの暗躍、ワンダーウーマンを含め次作への布石も打ち込んでいて、ここまで来ると少し窮屈な感じはあるもののギリギリで上手くまとめて形にしてるんじゃないかなと。序盤から話が飛ぶし二時間半は長すぎるけど、それでも楽しめたし好きな作品だな。
特に面白かったのは超常的な力を持つスーパーマンを「神」として描いているところで、死者の日のメキシコ火災で少女を助けたスーパーマンが仮装した住民に囲まれるシーン(何かの絵画モチーフがあるのかも)やドゥームズデイ戦後の「十字架降架」や「ピエタ」など、宗教画を意識した画が多く美しかった。あとバットマンが用意したクリプトナイトを装備した槍は「神殺しの槍」でもあり、それがドゥームズデイという悪魔ごとスーパーマンというを殺してしまうのも好みの結末(スーパーマンは復活フラグが立ってたけど、それも含めて「神」としての役割が割り振られているのだと思う)。スーパーマンはちょっと真面目すぎて『MoS』ではピンと来なかったけど、今回のスーパーマンは以前より好きになれたかもしれない。あと公聴会に出席するスーパーマンはやっぱりシュールで笑う。
ベンアフの演じたブルースも孤独な背中が良かったし、ノーラン監督版ゴッサムはあっさり平和になった感が拭えなかったけど(それでもあの三部作は面白かったし納得もしている)、こちらの「20年頑張ってきたけど未だにゴッサムの腐敗は健在で、精神が疲弊しつつあるブルース」の姿がまさに私が見たかったブルースだったので美味しい。そうして冷酷な自警活動を行うようになった彼がどうやって目を覚ますのかがキーなんだけど、マーサの名前を出すことでスーパーマンとの和解と同時に解決に至るのが上手かった。彼にとって両親の死はトラウマでありバットマンになった最大の理由でもあるから、両親の死がフラッシュバックしたことで歪んでいた精神が一気に引き戻されたのは納得の行く流れだった。あと皮肉増量のアルフレッドが格好良かったです。いい主従だな本当に。ブルースの両親の葬儀から始まり、クラークの葬儀で終わるのも綺麗な構成で好き。
二人を掻き回す役のルーサーは、動機を理解するのにめちゃくちゃ苦労した。ヘリポートでのスーパーマンとのやり取りでやっと本音が出て理解出来たけど、要するに彼は父親に虐待されていた時に自分は神にすら助けてもらえなかったのだと認識して絶望し、憎悪するようになった。重要なのは「神は存在しない」と考えたのではなく、「神は万能ではないし善人でもない」という結論に至った点で、だから神だと持て囃されるスーパーマンを「神を気取る偽善者である」と貶めたかったんだな。ただ、ルーサーの動機は理解出来たけど、スーパーマンとバットマンが互いを危険視するようになる流れはちょっと弱い。バットマンはすでに追い詰められていたのでまだ分からなくもないけど、スーパーマンがバットマンへの警戒を深めていくシーンはもうちょい欲しかった。
ブルースの見る夢は今後の伏線ぽいけど、ロイスを失って闇落ちしたスーパーマンが出てきたら面白そうなんだよな。「僕たちを探せ」と言ってた子は次に登場するんでしょーか。ワンダーウーマンはチラチラ顔だけ見せていきなり出現したけど、それがあんまりにも格好良かったので許されるのがずるい。それもあってドゥームズデイ戦は最初は消化試合感があったけど、始まってみるとめちゃくちゃ燃えた。スーパーマンとワンダーウーマンがドゥームズデイと戦ってるのを、瓦礫の影からバットマンが眺めてるとこがめちゃくちゃ好き。あと無人島とか廃墟とか戦って問題のない場所をアピールしてたのもちょっと笑う。
これでDCEU作品へのテンションがやっと上がってきた感触がある。ルーサーの「鐘が鳴っちゃったよ」発言も気になるし、続きが楽しみになってきた。