『アップグレード』感想

アップグレード (字幕版)

謎の集団に妻を殺されて自身も全身麻痺になってしまった男が、体に埋め込まれたAIチップと共に復讐に向かう近未来サスペンスなんだけど、グレイとステムのやり取りが『ヴェノム』のAI版といった感じなのでほとんどバディムービーとして楽しんでしまった。ストーリーも設定自体は真新しくもないしありがちな展開が続くけど、起承転結のポイントをきちんと押さえてあるから飽きることはなかった。地味ではあるけど良作。

最後も面白い着地になっていて、最初の襲撃から全部エロンが企んでいたのでは、と思っていたからまさかの結末にやられた。『アップグレード』というタイトルも上手い。ただの復讐劇ではないことも、グレイがステムにイニシアチブを完全に奪われてしまうことも予想していたけど、開始時点からすでにエロンが乗っ取られていたとは終盤までまったく考えてもいなかった。でもグレイにとってはステムどころか麻痺も消えてアシャも復活したし、ステムも目的を果たせたんだから見事に綺麗なハッピーエンドになっているのが面白いよね。思えばステムが容赦なく事件に関わる者を殺していたのも、グレイの精神を追い詰めるためでもあったのだなと。母親に動けることを知られて「人生をやり直せる」と言われるシーンは、もうグレイは何人も殺してしまっているから皮肉だなと思いながら見ていたけど真相は更に残酷だったという……。

アクションもそこまで派手ではないけどAIの正確無比な動きが面白いし、口をナイフで裂き殺したり腕に埋め込んだ銃で頭を吹き飛ばしたり眼球に針を通して映像を読み取ったりと、ちょっとゴアなシーンを入れてぐいぐい引きつけてくれたのも良かった。