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『トレーニング デイ』感想

トレーニング デイ (字幕版)

トレーニング デイ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

悪どいベテラン刑事と正義感の強い新人刑事、という組み合わせはバディムービーの王道だと思うけど、そこから思わぬ方向に向かうのが面白かった。こういう形のバディムービーがあってもいいと思うな。悪い男の魅力満載なデンゼル・ワシントンを見たくて鑑賞したようなものだけど、相棒に振り回されるイーサン・ホークも良かった。

ジェイクがアロンゾのやり口にドン引きして反感を抱くようになるまでは予想出来たし、アロンゾは正義を追い求めるあまり倫理観を無視せざるを得なくなった哀しい男だと思い込んでいた。が、実は倫理観はとうに失って本当にクズに成り下がっており、これまた違う意味で哀しい男だったのが面白い。アロンゾのすごいところは、 自分のしょっぱい都合で動いている弱い男でしかないのに「もっともらしい言い訳」に説得力があるところで、それはかつて正義感の強い男だったのも現実との狭間で苦悩して諦めていったのも恐らくは真実だからなんだろうなと。アロンゾはそうした説得力すらも利用し、必要悪を謳いながら色んな人間を言い包め、刑事の立場を利用して好き勝手に振る舞うんだから厄介な人間だな。ジェイクに過去の自分を重ねたのも本当だろうけど、だからこそジェイクが羨ましく、それ以上に鬱陶しかったのかなと思います。本当にジェイクを後継ぎとして目をかけていたのか、という点についてはちょっと分かりにくいけど、直前にスマイリーに「バスタブを磨いておけよ」と告げているので出任せのように思える。ただ、それならロジャーを殺した時にジェイクも始末出来たのに必死になって止めたのが気になる。もしかしたらアロンゾがジェイクを後継ぎにと考えていたのは本当で、でも殺そうとしたのも本当だった、と考えるとしっくり来る。

そうして悪党は悪党同士で殺し合えばいいと嘯いていた通りに、悪党になったアロンゾはロシアのマフィアに殺される。ジェイクは正義に従って少女を助けたことが後の自分を救い、アロンゾは好き勝手やってきたことが後の自分を殺すという、とても分かりやすい終幕。この濃密なストーリーはたった半日くらいの出来事だったけど、もう少し時間をかけていればジェイクが堕ちた可能性はあったかもしれない。が、アロンゾにはロシアンマフィアとの約束の期限が迫っていたからそうはならなかった。そしてそれはアロンゾの失態によるもので、そういう点を含めてもまさに因果応報だったんだなと。

ただ、ジェイクはアロンゾを逮捕せず見殺しにしており、そこにアロンゾの影響を受けて歪んでしまった彼の正義感が見えるようでゾッとする。あの後にジェイクがどうなったのか、想像するのも楽しそうではあるよね。