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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『新感染 ファイナル・エクスプレス』感想

走る列車でゾンビとの攻防やヒューマンドラマが描かれるのが、列車という閉鎖的な空間を舞台にした作品が好きな私には美味しかった。列車のドアであらゆるものが分断可能になっており、それが物語に大きく影響するのも面白い。やっぱり列車アクションのある映画は名作なんだよな。

あとゾンビってモタモタしてるイメージがあったんだけど、『ワールド・ウォーZ』といい最近のゾンビは俊敏らしく、噛まれたらすぐゾンビになるのが素晴らしい。スムーズで見ていて快適すぎる。テンポ良くゾンビになってテンポ良く進むし、それでいてゾンビにもちゃんと迫力があるから中弛みがなかった。さすがにソグやサンファが犠牲になった時は即ゾンビ化というわけにはいかなかったけど、その分ドラマティックになっているし、特にソグがやられた時の最後の父娘の会話は泣けた。最初は自分のことしか考えていなかったソグの成長物語でもあり(でもソグの序盤の行動は理解出来るし、責められるほどのものとは思わないけども)、父娘の物語でもあったのだなと。最後はスアンが父を想って歌う歌で終わるのも美しい。真っ当で頼りになるサンファも魅力的で、マ・ドンソクのファンになりそうなレベル。コン・ユも足の長さにびびった。

もう一人印象に残ったのがヨンソクで、とにかく過剰なほどに最悪の人間として描かれるのが特徴。ソグに「自分が他人にしたことが今度は自分に跳ね返ってくる」という経験をさせる役割もあったと思うけど、それ以上に視聴者のヘイトを集めるのが使命だと言わんばかりに余計なことしかしないのがすごい。もはや状況を悪化させるためにしか存在しないと言っていい。ここまで徹底して救いようのない人間として描かれるキャラクターは最近見た中ではいなかったので、たいへん面白かった。ヒーローのように描かれるサンファと対極を成す存在でもあり、バランスがいい。

しかし今までゾンビという存在に興味が持てず、ゾンビ映画はほぼスルーしてきたんだけど、こーんなに面白かったんだな……。ゾンビ自体には今でも興味はないけど、「ゾンビに襲われるというシチュエーション」の魅力にはようやく気付けたかもしれない。

ところで序盤に鹿が車に轢き殺されるシーンがあったんだけど、先日見たばかりのコン・ユ主演作『トガニ』でも同じく鹿が轢き殺されていたのでちょっとびびった。