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『スイス・アーミー・マン』感想

スイス・アーミー・マン(字幕版)

スイス・アーミー・マン(字幕版)

  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: Prime Video

ハリー・ポッターがオナラで海を渡る映画」と聞いたら気になるに決まってるだろこんなん。しかし無人島に遭難してしまったハンクが死体のメニーと共にピンチを切り抜けながら故郷を目指すという荒唐無稽なサバイバル・コメディを期待してたんだけど、鑑賞してみたら思ってたのとは違った。いやそういう要素もあるけどピークは最序盤で終わるし、そこは出落ちと言って差し支えない。オナラジェットスキーで海を渡り、別の島に流れ着いてからが本番だった。

森の中に入ってからは真面目な雰囲気で温度差に困惑したし、メニーが喋り出してからは正直テンションも下がった。メニーは死体であることが面白いのに喋り出すと死体感がなくなってつまらなくなったし、二人の会話も退屈。下ネタはどうでもいいんだけど、ハンクの過去に興味が持てなかった。水や火やフックを吐き出したり腕が斧になったりちんこコンパスで道を示したりなどのメニーの謎の万能感も、喋り出してからはあんまし盛り上がれなかった。中盤は久しぶりに何度も寝落ちてしまった。

が、後半のハンクの突然の女装が脈絡無さ過ぎて、一周回って面白く見えちゃったんだよな。ここで深く考えることを放棄してようやく面白いと思えるようになり、これは死体のメニーを映し鏡に自己との対話を経てハンクが浮上していく物語だったのだと理解した。だからハンクはメニーに自分の過去を追体験させていく。メニーの不思議な現象の正体が「孤独に死にたくない」という強い気持ちを抱えていたハンクによる妄想の可能性も示唆されていたけど、多分それはどうでもいいんだろうな。そう思えるほど孤独な小心者への救済が優しかった。エンディングの、雰囲気と力技で押し切ったようなよく分からない感動も好き。困惑したし中弛みもあったけど、最後まで見たら結構好きな作品になってしまった。