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『ファウンド』感想

FOUND ファウンド(字幕版)

FOUND ファウンド(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/01
  • メディア: Prime Video

兄のクローゼットの中に隠されている生首を時々見に行く弟の話。チープなところもあるけど、歪な家族の物語は大好物なので予想以上に楽しめた。ゴア描写も気合いが入っており、少なくても私が今まで見てきた中では一番グロい。ただ、ゴア描写が輝くのは劇中でマーティが鑑賞する『ヘッドレス』というスプラッター映画の映像で(しかもこれがまたやたらと長い上に露悪趣味全開だった)、肝心のクライマックスではまったく見せないんだよね。見せないことでより恐怖を煽るという意図は理解出来るけど、劇中映画でがっつりやっといて本筋では見せないから「なんだこれ」とはちょっと思ったな。いや私はグロが特に好きというわけではないけども。でもこうした変なところも含めて好きな映画ではあります。変な映画好き。

胸糞なのはゴア描写だけではなくマーティを取り囲む無理解な大人の描写もそうで、例えばマーティがトレヴァーに罵られて暴力を振るった時にマーティを心配して声をかけたのは母親ではなく牧師だったし、その時にマーティが母親に言い放った「母親失格だよ。兄さんも僕も失敗作だ」という言葉も結構来た。その後は父親が「相手から訴えられる」と怒鳴るのも最悪で、更に父親がマーティを殴ると母親は何もしないのにスティーヴが父親を殴ると止めに入る。こういうシーンを見せられて遣る瀬無くなった。だから兄弟は歪んで育ってしまったのだろうなと。

そもそもスティーヴの暴力の矛先が黒人に向いてしまったのは、古典的な差別主義者である父親の影響だと思われるのがな……。彼は自分でも抗えない凶行への衝動に理由が欲しかったんだと思うけど、マーティを守ることも理由の一つに "してしまった" んだろうな。苛めっ子のマーカスの首を斬り落とした兄に、マーティが「殺してくれてありがとう」と告げるシーンが印象的でした。

だから腐った世界から弟を解放出来たと思い込んだスティーヴは、最後に「理由」であるはずのマーティに否定されて絶叫する。最初は重い兄弟愛だと思ってたんだけど、彼は凶行に理由が欲しいだけの殺人狂と捉えた方がしっくり来た(でも兄弟愛という解釈も可能だしそれはそれで好み)。その後の兄が作り上げたエンディングの "家族の光景" は強烈で好き。奇妙な爽快感すらあったのは、彼らを取り巻く環境が酷かったからだろうけども。全裸でガスマスクを被り、血塗れになるスティーヴの姿も壮観でたいへん良かった。

他にも面白かったのが、スプラッター映画を見ている時にデヴィッドに馬鹿にされたマーティが生首を見せるシーン。歪な優越感が暴走していく様が圧巻だった。コミック調のオープニングも好き。

ところでマーティはスティーヴに対して、自分は手を汚していないという驕りがどこかにあったんじゃないかと思うんだよな。何となくだけども。