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『スリーピー・ホロウ』感想

現実主義者でへたれな刑事が、小さな村で起きた連続斬首事件の謎を追うゴシックホラー・サスペンス。ストーリーは大味で盛り上がりはあまりないけど、好きな要素はてんこ盛りだった。ジョニデとクリスティーナ・リッチの組み合わせは最高で目の保養になったし、ちょっと情けない主人公をジョニデがユーモアを取り入れつつ好演していて魅力的なキャラクターになってるんですよね。濃霧の立ち込める村や冷たく濡れたような森は雰囲気が出ていたし、ティム・バートン監督らしい映像美を堪能できるだけでも楽しい。雑なストーリーや設定で惜しい部分もあるけど、映像と雰囲気に関しては満点と言っていいほどで好きな作品にはなった。

気になったのはイカボッドのキャラクター背景が事件と上手く噛み合ってないところで、オカルト要素を出すのはいいんだけど、幼少時に狂信者の父親に母親を殺されたトラウマから迷信の類を一蹴していたイカボッドが「魔女」や「幽霊」といった概念にあっさり屈したのが不満なんだな。判事が首なし騎士に殺されるところを目撃してベッドの隅で怯えるシーンは面白かったけど、こういう展開にするならいっそ「オカルトが当たり前にある世界」という方向で良かったんじゃないか。この設定でも黒幕が迫害されていたという過去は作れるし、派手な演出も入れられる。というかそれこそ監督の十八番じゃないかと思うんだけども。実際、首なし騎士はすんげえ格好良かった。得物を器用にくるくる回す様は絵になるし、華麗な剣捌きも見ていて気持ちがいい。人間の頭部が大量に詰め込まれた木の根元から首なし騎士が飛び出すところは、おどろおどろしさと格好良さが同居していてたいへん素晴らしく、お気に入りのシーンになった。だからこそリアリティラインを中途半端にしたことで、魅力を十全に活かしきれなくなったのがもったいないなと。

イカボッドとカトリーナのロマンスについては、カトリーナのキャラクターが薄く(むしろイカボッドの相棒になったマスバス君のほうがキャラが立っていた)さっぱり盛り上がらなかった。ビジュアルはいいけどそれだけでは厳しいんだよねやっぱり。むしろ関係性に着目するなら一番面白かったのは首なし騎士とタッセル夫人で、夫人が幼い頃に二人が出会っていたというのがロマンを感じさせてワクワクするし、最後には咬み殺される勢いで首なし騎士の口で悲鳴を塞がれ、口元から血を垂らし、そのまま地獄に攫われてしまったのが面白い結末でした。この容赦のないタッセル夫人の最期は強烈でかなり好き。