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『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』感想

ヴァンパイアの孤独と悲哀を描くドラマ。ハロウィンだから鑑賞したのだけど、かなり好きな要素はあるのに結局ハマりきらせてくれず、めちゃくちゃもどかしい映画だった。世界観やストーリーはいいのに次のエピソードにさっさと移ってしまうので、ちょーっとダイジェスト感があるんだよな。魅力的なキャラクターは掘り下げられず、魅力的なエピソードは表面をなぞったような描き方に留まっており、盛り上がるところで盛り上がってくれない。ちょいちょいコントに見える時があるのも説得力のある描写を欠いているからだと思います(それはそれで面白いとも思ってしまったけど)。正直、もっと面白い作品にすることは可能だったと思うんですよね。せめて余韻をもっと感じさせて欲しかったなと……。

トム・クルーズの演じる退廃的なレスタトはたいへん美しく、孤独な者同士のルイや利用する者とされた者というクローディアとの関係も美味だったので、レスタトが燃えて一旦退場してからは作品のパワーがガタ落ちしたほど。それほどにルイとレスタトとクローディアの満たされるようで満たされない家族ごっこは、ああいう構図に弱い私には美味しかった。

一方、ブラピの悩めるルイは儚さとは無縁で似合ってないなと思ったけど徐々に馴染んできて、特にクローディアを殺されたと知り、旧態依然として進歩がない同胞たちを憎悪する時の表情が良かった。人間としての尊厳や価値観、ヴァンパイアとしての本能の間で苦しむ姿も、作中でも言及されていたように色気があって良かったと思う。けど時代に適応できず自滅してしまうことに怯えるレスタトやアーマンドに執着されるほどの存在かと言われるとピンと来ないので、そこはきちんと掘り下げて欲しかったなやっぱり。

キルスティン・ダンストのクローディアもなんか違うなと最初は思ったけど、大人になれないヴァンパイアの悲痛は子供だからこそストレートに出ていて、そこはちょっとぐっと来た。母親を失い、ヴァンパイアになった後はルイとレスタトという二人の父親に愛でられ、やがてレスタトを憎悪し、ルイが自分から離れていくと察してからは母親の愛をまた求めようとする幼さも切ない。しかし『ジュマンジ』の時といい、子役として登場するキルスティンには驚かされるなマジで。

ラストは若い記者の血を得て、陽気にスポーツカーを走らせる完全復活したレスタトの姿で締められていたのは痛快で良かった。レスタトは恐らくこうして享楽を愛し夜闇に生きて、でもまたどこかで瀕死になってそうな危うさもあるのだけど、生への執着が強いので結局しぶとく乗り越えるんだろうな。これを永遠に繰り返しそうで、そこがまたいいなと思う。要するに私はレスタトがお気に入りのようで、大きな不満はあれど、それでもこの作品が好きなのは彼の存在によるところが大きいんだろうな。