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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』感想

『Q』続編。清々しいほどの「結」の物語でした。それも優しい作品だったから驚いた。あと『エヴァ』は変な作品だなといつも思うけどそう思えるのが楽しいとも思っていて、今回は演出も含めてきちんと変な作品でもあったから満足しちゃったんだよな。そしてしっかり感情移入できるキャラはいなかったけど、嫌いなキャラは一人も出てこなかったんですよね結局。しかしこんなに綺麗に終われるものなんだなあの怒涛の『Q』から。

今回はまず前半の第3村パートがすんげえ良かった。トウジやケンスケ、委員長に会えた時の安心感が最高。「碇」とシンジを苗字で呼び捨ててくれる人はなかなかに貴重だと思うので、ケンスケの第一声でホッと出来た。しかしそれ以上にケンスケのシンジへの接し方が完璧すぎて(少なくとも私にはそう思えた)びっくりした。彼がこういう役割を成すとはまったく想像してなかった……。

そしてケンスケだけでなくみんな劇的に変わっている。それほどニアサーが大きかったのだろうし、トウジたちも大人になるしかなかった、てのは説得力があったと思う。更にレイのそっくりさんもものすごい速さで成長していくのだけど、ここは見ていて心地良かった。そうして変わったかつての友人たちやそっくりさんを通して、シンジも変わっていく。

ヴィレの面々にもフォローが入っていて、特にミサトさんの最後の勇姿には泣いた。髪を解くのがまた……。あと特に意識してなかった鈴原サクラもいいキャラクターだったな。出番は多くないのにインパクトのある子でしたね彼女。アスカもまさか名前が「式波」に変わっていた理由が語られるとは思わなんだ。マリとのコンビが意外に良いなと今回気づけたんだけど、「コネメガネ」「姫」って呼び合うのが好き。シンジとの幼い恋についても、旧劇を彷彿させる赤い波際でのやり取りでぐっと来た。ちょっと寂しいけども。

そんな中でゲンドウを見ていてシャアを思い出したんだけど、そこで自分が何故ゲンドウを好きなのかがストンと氷解した。私は『ガンダム』だとシャアが一番好きなんだけど、シャアに似ているゲンドウを好きになるのもそりゃそうだよねと。浅い視聴者ではあるけど、これに気づけただけでも新劇を最後まで見て良かったなと思います。しかしあのゲンドウがここまで心の内を晒すことになるとは思わなかったな……。やっぱり親子の対話に集約されていくのだなこの物語は。

あと私は一番好きなキャラはゲンドウであるのと同時に「男の人生を狂わせるような女」も大好物なので一番気になっていたのがユイだったんだけど、彼女はこれまでずっと描写が少なかったからそこにも期待してたんですよね。でも終わってみれば碇ユイブラックボックスのままで、しかし今となってはその方がいいのかもなとも。マリも最後まで深い掘り下げはなかったんだけど、シンジが最後に手を取った相手がマリであることにはすんなり納得できたんですよね何故か。

しかしテレビ版や旧劇も含めて綺麗な着地に到達するとは思わず、なんかここまで来ると逆に慄いた。基本的にこの手の「とにかく広げた風呂敷を畳んでいく」ような作品はあんまり好きではないのだけど、ここまで丁寧にやられると文句も霧散してしまった。いやだって「ネオンジェネシス」まで回収されるとは思わなかったものな。おかげで見終わった後の満足感はかなり高かったのでした。実は一番謎が残ったままなのは冬月という気もするし「渚司令ってなんやねん渚司令って!」という疑問もあるけど、そこはまあ。