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『羊たちの沈黙』感想

FBI実習生が連続猟奇殺人事件解明のために、凶悪犯として収監されている元精神科医の協力を得ようと対話に挑むサスペンス。小さいころに初めて見た時の衝撃はもうないけど、今見たからこそ新しい発見を得られたし、レクター博士は私にとって映画の中の初恋のキャラクターなので今でも面白く見れたことが嬉しい。霧に包まれた森の中でトレーニングに励むクラリスを映しながらあの音楽が流れるオープニングから一気に引き込まれていく体験は、何度味わっても心地良い。

まずこんなに顔のアップの多い映画だったことに驚いたんだけど、普通なら安易に表情だけを強調しても飽きてくるのに、クラリスやレクターの顔を見せられても苦じゃないんだな。ジョディ・フォスターアンソニー・ホプキンスはどちらも品があって素晴らしい。それと息苦しいまでの男の視線に晒されるクラリスの姿がこれでもかとばかりに映されており、ストレートなフェミニズム映画だったことにも今になって気付かされた。そんな中で、初々しくも凛と振る舞うクラリスが魅力的でした。

何より勇敢で美しく聡明なクラリスと、気品と教養を兼ね備えた迫力のあるレクターの関係がとても好き。この二人の駆け引きはバッファロー・ビルの事件そのものよりもずっと面白かった。初めてクラリスがレクターと面会した時、色んな人からの忠告を早速無視していたのは笑ったし、二人が別れる際に資料を渡すレクターの指がクラリスの手を撫でるところもそそられる。この時のレクターが収監されている巨大な檻は「こんな檻があってたまるか!」と突っ込みたくなるような代物だしファンタジー感もあるけど、むしろそこがいいんだよね。

事件の犯人ビルはラストのクラリスとの対決がスリリングだったし、自分を性的倒錯者だと思い込んでいるビルのキャラクター(と言ってもこれはあくまでもレクターの見立てでしかないが)も強烈なんだけど、やっぱりクラリスとレクターの巨大な檻越しのやり取りとその後のレクターの脱走劇の盛り上がりが凄まじく、こちらの方がクライマックスになってしまった。だから犯人に辿り着いてからの展開は消化試合感が否めなかったな。クラリスとレクターの存在感が強すぎるのがこの作品の欠点と言えるのかもしれないけど、それでもこの作品はこれで良かったのだと思います。ちなみに初めて見た時はクラリスの上司クロフォードが真犯人だと思ってたんだよね確か。懐かしい。

ところでクラリスのトラウマになっていた子羊の悲鳴が止んだのは良かったけど、チルトンの悲鳴は是非とも聞きたかった。まあ彼はレクターにきちんと(?)殺されたのだろうけど、なかなかのクソ野郎だったので殺されるところも見たかったなと。