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『シンドラーのリスト』感想

ドイツ占領下のポーランドで多くのユダヤ人を救ったナチ党実業家オスカー・シンドラーを描く戦争ドラマ。ホロコーストを題材にした三時間を越える大作と聞いてなかなか手が伸びなかったのを、ようやく見た。名作だとは思うけど、映画にメリハリがないのと長すぎるのとで何度か集中力が切れかけた。それでも面白かったしスピルバーグの熱意は感じた。渾身の一作。

シンドラーが俗物として描かれていたのは意外だったな。ユダヤ人への偏見がないというよりは金と女が欲しいだけの男で、そのためにはユダヤ人だろうと戦争だろうと気にせず利用する。そうしたフレキシブルな価値観を持っていることが序盤から伺えたので、シンドラーが変わっていく様もそこまで不自然ではなかった。それでもキャラクターは掘りきれてないので、リーアム・ニーソンが熱演はしてるんだけど物足りなくはあるな正直。赤いコートの少女だけでなく、シュターンとアーモンという対極にある二人の存在もシンドラーに強く影響を与えたのだろうことは分かるけども。この二人はシンドラーよりキャラクターが明確で良かった。アウシュヴィッツに行くことが決まったシュターンがシンドラーと酒を酌み交わすシーンは、出会って間もない頃にシンドラーに酒を勧められても憮然とするだけだったことを思えばぐっと来るし、その後シンドラーの告げるユダヤ人の名をシュターンが粛々とタイプしていくシーンも良かった。アーモンの方もヘレンの言うようにルールもなく気ままにユダヤ人を殺していく酷い将校なんだけど、そのヘレンに惹かれているのにユダヤ人だからという理由で彼女を抱くことも出来ずフラストレーションが溜まり、欲情するのもお前のせいだと責任転嫁して殴り出すのが心底からクソ野郎で輝いていた。シンドラーに「許し」の話を聞いて実践するものの、一度は許した少年をやっぱり殺してしまうところも印象的。

他にもSSによる暴挙の数々が描写されるけど、ゲットー解体で夜の街が発砲で明滅する光景や連行される子供たちを見た時の母親たちの狂乱は今後も何度か思い出しそうな映像でした。しかしユダヤ人虐殺なんてドイツにしてみれば手間も金も時間も人員もかかるだけなのにわざわざやるものだから、酷く滑稽だなと思ってしまう。シンドラーが効率よくユダヤ人を利用しているから尚更。こんなことで大量の人が殺されてしまったのかと思うと……。

ところでリーアム・ニーソン出演作はあんまり見ておらず一番印象に残っているのが『バットマン ビギンズ』の謎に忍者の格好でクリスチャン・ベイルに稽古をつける姿なんだけど、背が高いこととか足が長いこととかスーツが似合うこととか声がすんげえいいこととか今回初めて知った。この映画のMVPはシュターン役のベン・キングズレーだと思ってるけど、リーアム・ニーソンの魅力を知ることが出来たのも良かったなと。