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『Shall we ダンス?』感想

Shall we ダンス?

Shall we ダンス?

  • 発売日: 2014/09/12
  • メディア: Prime Video

些細なことから社交ダンスを始めた主人公が次第にダンスにのめり込み、それが周囲にも影響を及ぼしていく話なんだけど、ベッタベタに王道で攻めていたのが良かった。題材は社交ダンスというちょっと珍しいものだけど、ダンスのレッスンも分かりやすいし流れるようなステップにも魅入ったし、何より登場人物がみんな楽しそうなのがいい。脇役も個性派揃いで賑やかだし、甲斐性はないけど真面目で一生懸命な主人公のキャラクターも好き。

最初は不倫になってもおかしくない導入でちょっと驚いたんだけど、すぐにそうはならないだろうな、てのがなんとなく分かる。杉原が一目惚れしたのは確かだけど、妻子のある身だろうとなんだろうと美しいものに見惚れること自体は罪悪ではないし、ダンスを始めたきっかけも些細なことでしかなく、目的が舞からダンスそのものへと変わっていく様が分かりやすかった。この辺りは監督と役者の見せ方が上手かったのかなと思います。

杉原と舞の間にロマンスは発生しないけど、二人の重大なきっかけが毎回「ダンス教室の窓」にあるところにささやかなロマンが感じられて良かった。日々のルーティンを淡々とこなして電車に乗っていた杉原がダンス教室の窓の近くにいた舞に見惚れたのが始まりだったし、舞の傲慢な考えを変えたのは駅のプラットホームでステップを踏む杉原を窓から見下ろしていた時で、舞とのお別れパーティに行くべきか迷う杉原の背中を押したのも窓に込められたメッセージだった。特に最後の「Shall we ダンス?」のメッセージは、何故タイトルの「ダンス」だけ日本語表記なのかが分かる瞬間で熱い。

杉原夫婦はお互い直接言うなり聞くなりすれば良かったんだけど、夫は気恥ずかしくて言い出すタイミングを失い、妻は真面目な夫が何も言わないから不安になって探偵を雇ってしまう、という良くない連鎖が発生する。ここから大会での失敗や自宅の庭での夫婦のダンスなど、後半のドラマに繋がっていくのも良かった。探偵が杉原の熱意に引きずり込まれて、何故かダンスにハマっていくのがまた面白いんだよな。したり顔で解説するところはちょっと笑った。

一番好きなシーンはやっぱりクライマックスで、ダンスパーティでの舞の「Shall we dance?」は来ると分かっていても鳥肌が立つ。クライマックスでのタイトル回収にはどうしても弱いな私は。よれよれのスーツ姿の杉原と赤いドレスで着飾った舞、という対照的な二人の格好も良かったし、この二人から踊り出してから徐々に参加するペアが増え、そこからエンドロールに至るまで映し出された怒涛の群舞は壮観だった。