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『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』感想

前作のような緩いイチャイチャバディムービーを期待していたら、ホームズとワトソンの濃密な新婚旅行が描かれていた。えっ何ですこれは。

前作の改善点をきちんとクリアしてきたのは素晴らしい。具体的に言うと、ホームズが数手先をシミュレーションする "シャドウゲーム" を物語に生かしつつここぞという場面で使っているところとか、中途半端だったアクションシーンの強化とか、ホームズとワトソンのキャラクターをより分かりやすく描いているところとか、捜査状況を把握しやすくなっているところとか。

更にホームズとワトソンの関係描写も強化されていて、これがめちゃくちゃ面白い。アイリーンとメアリーという二人のヒロインをさっさと退場させた後に延々と描かれるのは、もはやヤケクソ感すら漂うブロマンスを超えた何かだった。危機的状況で「新婚旅行に行ったくらい幸せか?」と何度もホームズが相棒に聞くシーンは「このおっさんめんどくせえ!」とある種の感動すら覚えたし、おっさん二人で社交ダンスをするシーンは何故か見ている私のほうが赤面したし、列車での女装ホームズと新婚旅行を台無しにされたワトソンのコントに至っては役者も楽しそうで笑ってしまった。ワトソンはガチで理不尽な目に遭ってて本気で可哀想になる時もあるんだけど、なんだかんだでエキセントリックなホームズに振り回されるのを楽しんでいる節があるからマゾだなこの人……。新ヒロインのシムザも二人の邪魔をしないポジションに収まっていた、というかむしろダシになってませんかこれ。あのモリアーティですら、ワトソンが結婚して気落ちしているホームズに相棒とまた組ませるきっかけを与えてくれるんだから今回はほんっとーに至れり尽くせりだなまったく。あとポニーで移動するところもそうだけど、全体的にあざといんだよな今回。そこがいいんだけども。ワトソンの打った「THE END」の文字に「?」を付け足す終わり方も最高。

ただ、モリアーティは強敵だったけど、"ホームズの敵" としての凄味やカリスマ性はもーちょい欲しかった。ライヘンバッハの滝のエピソードやモラン大佐の登場は美味しかったけども。あとアイリーンがあっさり死んでしまった時はびびった。あまりに呆気ない退場だったんで生存している可能性もありそう。

というわけで粗もあるんだけど、それを含めてもたいへん楽しかった。モリアーティとの対決を描きつつも軸にあるのはホームズとワトソンの物語で、それが最後までブレないのが良かった。今回もミステリ要素が薄く、勝手にホームズが答えに到達するのを眺めているだけの感はあるけど、このホームズはそれでいいのだと思う。ホームズのトンチキ七変化も面白かったし、ハンス・ジマーの音楽も絶品。でも私に一番刺さったのは、ホームズが自分の恵まれた才能を「呪いだよ」と零すシーンかもしれない。