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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『Search / サーチ』感想

「100%すべてPC画面の中で展開する」というコンセプトを予告で謳っているけど、ズームインやアウトを多用したり端末がスマホになったりパソコンで見ているという体の映像(ニュースとか)も多く、事前に期待していたものとはちょっと違った。けどそこを差し引いてもめちゃくちゃ面白かった。ドラマとしてもサスペンスとしても上質で、二転三転する展開に翻弄されつつエンディングまで到達した後の満足度も高い。

まず「失踪した娘の手掛かりをパソコンで追う父親」というアイデアが面白いんだよね。デビッドの娘を心配する気持ちは大いに理解できるんだけど、娘のSNSアカウントに不正ログインする、てのは娘のプライバシーを暴いていくことでもあるので、見ているこちらとしては居心地が悪くなってくる。パソコンの中身やSNSが濃密な情報の宝庫になっているのは確かなのでデビッドの行動も納得出来るんだけど、だからこそ居た堪れない。私なら身内に見られるよりは、赤の他人の警察に見られた方がまだマシだと思えてしまうな正直。でもそうした居た堪れなさを含めての面白さなんだよねこの映画。

デビッドがパソコンを駆使出来るのはIT系の仕事をしているから、と明確にされていたけど、マウスポインタの動きやキーボードを打つ速さ、一度テキストを送信しようとしてやめて別のテキストを送信するなど、そうした些細なところでキャラクターの心情を表現するのも面白かった。「一度書いた文章を消す」という行動による表現自体は珍しくもないんだけど、「ディスプレイ上で進行する」という制約を設けたことでより響く。また女子高生失踪事件をネット上の無数の野次馬がネタとして消費したりマーゴットと親しくもない学校の生徒が事件に便乗して承認欲求を満たしたり、フリーの写真素材になっているモデルの存在など「ネットでお馴染みの要素」も上手く使われていたなと。

こうしてみると、パソコンやスマホって本当に「情報」で溢れているなと実感する。デビッドはそんな無数の情報の海の中で手掛かりを引き当てて注目し、そこから点と点を結びつけて新たな線を見出すことに優れていた。有能すぎる。おかげでテンポも良かった。強引なところもあるけど、それが気にならないくらいにサクサク進む。逆に警察の無能ぶりが際立つけど、「この手の作品で警察がアホなのはしゃーないよね」くらいに思ってたらちゃんと理由があったから舌を巻いた。振り返ってみれば伏線もあちこちに散りばめられていたのだと分かる。

親子のドラマもしっかり描かれており、特に娘の安否を気にしつつも娘の失踪の原因が自分にあると思いたくないという焦燥が強く出ているデビッドの痛々しさが印象的。そしてぎくしゃくした親子関係が、デビッドとマーゴットだけでなく犯人にまで及んでいたのがほんと抜かりがないなこの脚本。ヴィックが犯人だと分かった瞬間は震えた。まったく分からなかった。息子が詐欺で募金活動をしていた時と同じ対応なんだなこの母親は。娘の身を案じる父親と息子の身を案じる母親、という似ているようで違う親子関係の描写が秀逸でした。ちなみにマーゴットとピーターの関係に辿り着いた時も驚いたし、その時点でこの弟が犯人だろうなとも思っていた。本当に先が読めなくて、連続するどんでん返しに見事に転がされまくったもんな。気持ち良く転がされた挙句、最後には気持ちのいいエンディングに辿り着くのも最高でした。