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『スカーフェイス』感想

スカーフェイス (字幕版)

スカーフェイス (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

ゴッドファーザー』のアル・パチーノは名門マフィアのサラブレッドだったけど、こっちは移民からマフィアのトップに成り上がるアル・パチーノの盛者必衰を描いていて、今となってはありがちな話ではあるけど三時間の映画を見終わるくらいには面白かった。が、トニー・モンタナという主人公は私には刺さらなかった。この手のストーリーは好きだし、後半の破滅へと一直線に転がり落ちていくところなんかは予想通りの展開であっても見応えはあるんだけど、基本的にあの手の粗野で荒々しいキャラクターは好きにはなれないらしい。

それでも面白い主人公だとは思っていて、彼の激しい気性はマフィアに向いているのに、気性が激しすぎて何もかもを壊すからマフィアのような「組織」ではやっていけないという、そういう極端さが自らにも牙を剥く結末が好き。「The World is Yours」と書かれたオブジェがトニーの死体を見下ろしているラストが象徴的で、辿るべくして辿り着いた終幕とも言えます。ちなみにあの銃撃戦、ちょっと安っぽさが漂うものの「Say hello to my little friend!」の台詞もあって格好良いのがずるい。トニーの背後から迫る殺し屋は、出る作品を間違えてないかと問いたくなるレベルで浮いてて笑ったけども。

トニーの周りの女性陣もそれぞれ面白い立ち位置になっており、まず強引に妻にしたエルビラは高嶺の花だったから求めただけのトロフィーでしかない。ただ、美しいこと以外は何の価値もないように描かれていたエルビラはその美しさに極振りしてるような凄まじい美貌で、それだけで説得力があったのがすごかった。ミシェル・ファイファーが美しすぎる。一方、ジーナをトニーが愛していたのは間違いない。特にジーナに他の男が関わるたびに憤怒のトニーの目をズームアップするシーンは吹く。ただ、妹を女として愛したのか家族として愛したのかは私には分からなかった。どっちでも結末は変わらなかったとは思うけども。でもマニーを殺されて絶望したジーナが、「抱いて」と何度も言いながらトニーに発砲するシーンはなかなかに壮絶でゾクゾクしたし、それでも尚トニーはジーナを愛するのが切ないというか怖い。ジーナにとってそれは鬱陶しいものでしかなかったことも、独り善がりなトニーの悲哀を感じさせて好き。

ちなみにバイオレンスはあまり好きじゃないんだけど、生きたままチェンソーで仲間が惨殺されるところも直接映すわけじゃないし、そこまでえぐいものはないので安心して見ていられた。

というわけで刺さりはしなかったものの、アル・パチーノの格好良さを堪能できる作品ではあったのでひとまず満足。ちょっと長すぎるけども。