ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『ロープ』感想

友人をロープで絞め殺した後の二人の青年を、ワンカット風に映すサスペンス。いつものヒッチコック監督作品らしくあっさりしているし室内劇だから映像的にはどうしても飽きが来るんだけど、サスペンスがどうこうというよりは愚かな優生思想に取り憑かれたブランドンというキャラクターが、こう言っちゃなんだけど面白かったので楽しく見続けられた。時間と共に表情を変えていく窓の外の摩天楼の風景もいいんだよね。

ブランドンは自分が優れた人間であることを証明するためだけにデイビッドをフィリップと二人で殺し、更に刺激を求めて被害者の両親や婚約者、その婚約者の元カレ、大学時代の教授を殺害現場に招待してパーティを開催するような勘違いクソ野郎で、他にもデイビッドの遺体を隠したチェストの上に料理を並べたり、デイビッド周辺の三角関係を弄んだり、凶器のロープで縛った本をデイビッドの父親に土産として持たせたり、フィリップが鶏を絞め殺した話をしたりと悪質な傲慢さが目立つ。しかも完全犯罪を謳っているくせに杜撰な犯行で失笑させてくれるし、実際にデイビッドの首を絞め殺したのはブランドンではなくフィリップなあたりにもブランドンの底の浅さが出ている。

だからこそ彼のお粗末な犯罪が露見する瞬間が、ただただ待ち遠しかった。この手の作品はいつ犯行がバレるか冷や冷やしながら楽しむものだと思うけど、ブランドンの根拠なき自信が無残に砕かれた時の表情が見たくてむしろ早くバレないかなとワクワクしてしまった。特にチェストの上を片付けていくウィルソンを定点カメラで映すところはテンションがブチ上がる。最後はルパート教授のブランドンたちに対する批判が浅いのでいまいち締まらなかったけど、動揺するブランドンが見れたので満足はした。しかしフィリップとの対比は面白かったけど、何故ブランドンが気弱なフィリップを共犯者にしたのかはよく分からんな。まあ組んだのがフィリップじゃなくてもバレたとは思うけども。