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『レディ・オア・ノット』感想

レディ・オア・ノット (字幕版)

レディ・オア・ノット (字幕版)

  • 発売日: 2020/06/24
  • メディア: Prime Video

新婚初日に新郎一族との命懸けの隠れんぼに参加させられる花嫁をハイテンポで描くスリラー。見る前は「凄腕の一家に翻弄されながらも奮闘するヒロイン」という図をイメージしてたのに、みんな殺しに慣れてなくて驚いた。だからグダグダ感が常に漂っており、それが荒唐無稽なストーリーを更にメチャクチャにしていて奇妙な面白さがある。こんなに雑で無様な殺人ゲームはそうそう見当たらないんじゃないか。

エンディングではそんなグダグダ感を文字通り吹き飛ばすル・ドマス一族の強烈な死に様でゲームセットと相成るのが、グロテスクかつ歪な爽快感があって最高。ボロボロのウェディングドレスに銃を構えるグレースも良かったけど(銃が活躍しなかったのは残念)、燃え盛る豪邸を背に血で染まった真っ赤なドレス姿で階段に腰掛けながら、煙草をプカプカ吸うグレースで〆るところも好き。勝者の貫禄を漂わせた花嫁が格好良すぎた(すぐ離婚したが)。しかしオカルトを盲信するバカバカしい儀式に見えたのに、ル・ベイルが本当に存在していたとは……。このオチはちょっと予想外だったな。

ル・ドマス一家は個性的な人が揃っているけど、尺が短いのとサクサク進むのもあって実は印象に残るキャラクターは少ない。そんな中で面白かったのはアレックスで、一見「愛する妻を守ろうとする真っ当な夫」のようでいて実はなかなかのクソ野郎なのがいい。悪魔を見たことのあるアレックスは闇を払える強さを持つグレースに依存しており(ダニエルが甘やかしていたことも原因になっているのかもしれない)、えげつないゲームのことを伏せていたのも彼女に見捨てられるのが嫌だったから、というひっでえ理由で結構早くから「なんだこの身勝手な男は!」と思わせてくれるんだけど、「僕にはもうウンザリ?」と聞かれて答えられないグレースに絶望して依存心が殺意に反転するシーンは、矮小なエゴイズムが強く出ていて一際輝いていた。こういうクソ野郎は大好物なので楽しい。