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『ジャッジ / 裁かれる判事』感想

田舎で行われる法廷劇を舞台に、不器用な父と息子の和解を描くドラマ。金持ちで有能で皮肉屋で女好きで傲慢なハンクと、実直で真面目で正義感が強く頑固なジョセフ、という親子像は類型的ではあるけど、親子の描写は丁寧だったし役者の演技が良かった。特にハンクはMCUのトニーそのものだと最初は思ったけど、なんやかんやでトニーとはどこか違うなと思えてくるからRDJはすごいんだろうな。ハンクが苦い過去と故郷と親の老いとも向き合う話で、派手ではないけどいい映画を見たなという充足感がある。二時間半はちょーっと長すぎるけど、ダレることもなく一気に見れたのでまあ。

印象的だったのはやっぱりクライマックスの裁判で、証言席についた被疑者の父に息子が弁護士として問うことで、事件の真相以上に父の想いが詳らかにされていくところがぐっと来る。あそこで一瞬だけ落ちるハンクの涙も美しく絵になっていたし、彼の気持ちも伝わってきて貰い泣きしてしまった。いつもは判事として厳しく公平に対応してきたジョセフが、被疑者に息子をつい重ねてしまったことを告げた時の表情もいい。ロバート・デュヴァルはやっぱり圧巻でした。便失禁も結構な衝撃だったけど必要な場面だったと思うし、あそこで甲斐甲斐しく世話をするハンクとのやり取りがまた泣ける。

元恋人のサムとの関係も、幼馴染み特有の空気が出ていて良かった。カーラの父親問題をあそこまでわざわざ引っ張る必要があったとは思えないけど、でも父親の正体を知った時のハンクの反応にはすんげえ笑った。好きな女がことごとく他の男と寝たりしてるけど、ハンクにも問題があったので(元恋人も妻も放置している)まあ自業自得と言えばそうかも。あと「ワオ」が口癖のケネディはすぐ出番が終わるかと思いきや、最後まで関わってきたのは意外だったな。彼が裁判前に毎回緊張で吐くのを呆れながら見ていたハンクが、父親の弁護をすることになった時に自分も吐いてしまうのがちょっと微笑ましい。携帯コップが印象的なディッカム検察官も出番は少ないんだけど、判決が出た後に泣くハンクを見つめる表情が良かったな。

RDJやロバート・デュヴァルを始め色んな役者の好演が光る映画を見ると気持ち良くなれるという、当たり前のことを久しぶりに思い出した。名優による静かなアンサンブルに酔わせてくれる一品でした。