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『新感染半島 / ファイナル・ステージ』感想

前作はゾンビがいる世界で人間ドラマを描いていたけど、今回は更にゾンビが舞台装置と化して人間ドラマを強く見せる映画になっていた。ゾンビがちょっと目立ってない感はあるけど、人間の物語を見るのが好きな私はこういう作品は大歓迎。が、思ったより乗れなかった。肝心の人間関係の書き込みが足りておらず、私が一番期待しているところで満足出来なかったからなんだけども。キャラクターが多いから視点が頻繁に移動するんだけど、それも原因になってるよーな(ただし視点が移動しまくっても混乱することはなかった)。

ジョンソクとチョルミンの関係はジョンソクの罪悪感と成長を描く上でも重要になるけど、「姉を見捨てる形になった(妻を見捨てられた形になった)」以外の情報がなく、現地に着いてもすぐ離れることになるからちょっと感情移入しづらい。香港で過ごしている時の二人がもう少し見たかった。ミンジョンの一家も描写が多いわけではないから、終盤の祖父をみんなで看取るシーンはピンと来なかったし、救助のヘリが到着してからの「ジョンソクが今度こそ他人を見捨てず助ける」展開はスローモーションの演出がくどいのもあってちょっとな……。姉妹にももっとキレッキレの活躍を見せてもらえると期待してたんだけども。

631部隊もわざわざソ大尉組とファン軍曹組に分けず、シンプルな敵にした方が良かったんじゃないかなと。でも生き残りの人間とゾンビに鬼ごっこさせるという悪趣味な娯楽が毎日開催されているところは、絶望的な世界でも人間の醜悪さは健在なのだと分かって良いよね。そうして散々楽しんできたファン軍曹が、最後にはゾンビの集団に襲われて終わるのもスッキリした。やっぱりクソ野郎は報いを受けないとな。

後半の『マッドマックス』のような追走劇は、ゾンビがいる隔離された半島で生き抜いてきたからか住民もゾンビの習性を理解してある程度の対策を備えており、ライトを誘蛾灯のように使ったりゾンビの大群を車で豪快に轢き倒したりするのはすんげえ楽しかった。けど、しょっちゅうやるので後半には飽きてしまう。あまりに車でガンガン蹴散らせるので、ゾンビに脅威を感じなくなってしまったのもある。

印象に残ったのはチョルミンが死んだ直後にミンジョンがトラックで助けに来てくれたシーンで、ミンジョンがいくら呼んでもチョルミンの死体に釘付けでジョンソクがなかなかトラックに乗れない光景が、序盤の船内で感染した甥から離れない姉を呼ぶジョンソクの姿と重なった。いいシーンだったな。

前作とは別物になっているという話だけは事前に聞いてたんだけど、テーマも同じだし私はそんな印象は受けなかった。まあ別物になっても面白けりゃそれでオッケーなんだけど、面白くないわけではないのに物足りない感が強く、結局最後まで期待値を越えてこなかった。惜しい。