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『恋は雨上がりのように』感想

大雨が降っている日にタイトルに釣られてチョイスしたら、眩しいくらいにものすごく真っ当な青春映画で素直に楽しめた。あと主役のみならず脇役に至るまでキャスティングがハマってた。特に大泉洋はテレビをほぼ見ないから詳しくは知らなくて「北海道のすごい人」くらいの認識だったんだけど、近藤店長という真っ当な大人役がぴったりだった。そして走るのが得意な彼女の性質を表すかのような、恋にも真っ直ぐで乙女なあきらを演じた小松菜奈もすんげえハマってた。オープニングの躍動感が主題歌も相俟って素晴らしかったんだけど、この時点で小松菜奈に見入ってしまったほど。トム・クルーズもそうなんだけど、私は人間がひたすら真っ直ぐに走り続ける図が好きなんだなとようやく気づいた次第です。というわけで、主役の二人の役者ありきの映画でもあったなと。

実は見る前は「女子高生に迫られるけど大人として店長が諭して前に進ませるいい話」かと思ってたんだけど(女子高生に迫られてそのまま店長と両思いになるような作品ではないだろうと予測はしてた)、前に進めるのは子供だけでなく、子供に教えられた大人も前に進めるのだと伝える物語になっていたのは意外でした。すんごい優しい作品なんだよなこれ。

図書館でおすすめを聞いたあきらに店長が「本ってね、一方的に薦められて読むものではないんだよ」と答えて、そうして二人ともが「挫折した夢」に向き合わされる本を手に取るシーンが良かったし、あきらと店長が再び夢に向き合うきっかけになったのはお互いの存在にあるんだけど、あきらはみずきという自分を目指している者、店長はちひろという自分が目指したかった者のそれぞれの言動が起爆剤になっているのもまたいいなと。

ちなみに店長は図書館でのシーンに限らずいいシーンが多いんだけど、他にも印象に残ったのがあきらをタクシーで送り出そうとした時に嵐のような風に吹き飛ばされてしまうところと、朝起きたらキッチンから音がして「よもや?」と期待したらちひろでガクーッとなるところというコントなシーンだったのが面白かった。というか、この辺は中の人の得意とするところなのかな。

あきらは先述したように恋する乙女ぶりが可愛いんだけどそれはありきたりなものばかりで、でもありきたりなのがとてつもなく輝いてるんですよね。加瀬とのデートシーンは店長の時との露骨な違いに笑う(空手チョップTシャツは普通に欲しくなったけど)。見る映画のチョイスまでわざわざ一緒なのもじわじわ来る。

そしてあきらは恋だけでなく何に対しても極端なところがあるので、それがはるかや部活や吉澤への態度として現れてしまうし怪我をして立ち止まる姿も目立つ。だからみずきが来てしまう。彼女はあきらへの追及も苛烈で良かった。みずきは後半からの登場なのに登場シーンのインパクトが強いし、その後も強いシーンが多くて美味しいキャラクターだったな本当に。みずきがちょっと強烈すぎたけど、はるかや加瀬もいい役回りでしたね。吉澤くんの最後の前髪オチは吹く。

風邪で休んでる店長のアパートにまで押しかけてあきらが「私、やっぱり店長のこと好きです」と告白するクライマックスシーンも、これは実際やられたらただの迷惑行為だなとも思うんだけど、これをやれるのがあきらだし、そんなあきらを追い返せないからこその店長なんだよなと納得出来てしまうんですよね。ここで店長がはっきりと振っていたのも良かった。

それでもあきらの気持ちを「子供の幼い恋」だと軽視せず、ただの挫折からの逃避ではなかったのだと示すラストもいい。あの二人が今後どうなるかは分からないけど、何にせよいい関係を続けていけるんじゃないかなと思える。いいエンディングでした。