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『のぼうの城』感想

映画「のぼうの城」【TBSオンデマンド】

映画「のぼうの城」【TBSオンデマンド】

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

野村萬斎佐藤浩市が好きなので期待して挑んだけど、期待していた内容とは違った。私が見たかったのは奇策を打って敵を鮮やかに出し抜く主人公による痛快な話であって、戦を人情で切り抜ける話じゃないんだな。更に人情劇として見てもつまらなかったのが、なんつうかまあ。

要するにこれは農民に慕われているのぼう様が農民と共に三成からの猛攻に耐える話で、もっと突っ込んで書くとのぼう様が良くも悪くも家臣や民を振り回す話だった。これでのぼう様に魅力があればまだ良かったんだけど、私には最後まで主人公の良さが分からなかった。一時の感情で無謀な戦を始め、多くの命と田畑を失い、最終的には開戦のトリガーになった甲斐姫も奪われてしまう。でも家臣や民はのぼう様を盲信しているし(のぼう様が言うなら戦も仕方ねえ、とか言い出した時は呆気に取られた)最後には三成まで褒め出すので、見終わった後はなんか疲れたな……。野村萬斎からしっかり映したいのは分かるけど、田楽踊りも特段すごい策というわけでもない上に冗長で、そもそも合戦シーンがダラダラ続くのもしんどい。水攻めが来る時ものぼう様が楽観視していて、秘策でもあるのかと思いきや何もなくそのまま村や田畑が壊滅した時は「は?」って声出た。

ぶっちゃけ最初から無血開城甲斐姫を差し出せば良かったんだよな。秀吉には内通の意志を伝えてあったんだから、わざわざ刃を交えることもなかった。三成の煽りにまんまと乗せられたのは本当に軽率としか言いようがない。甲斐姫も出陣するわけでもなくさりとて活躍するわけでもなく、せっかくの設定もあんまし活かされてなかったよーな。

三成は序盤は面白かった。戦下手な彼のために周囲がひっそりとお膳立てするんだけど、三成自身の策によって自分の求めていた「対等に戦える図」へと導くのがいい。武功を求めるあまり、秀吉による水攻めの光景に魅入られた感があったのも良かった。上地雄輔も意外なキャスティングだったけど合ってたと思うな。

他にも良かったところを挙げると、この手の戦のシーンになると重装備になるのもあってキャラクターの見分けがつかなくなることが多いんだけど、これはそんな心配がなかった。特に大谷吉継役の山田孝之は髭だけで分かるのがすんげえありがたかった。思わず拝んだ。髭に。あと水攻めが大津波になっていたのはリアリティはないかもしれないけど、迫力はあったのでそこは映画だからこその豪華な映像として素直に楽しんだ。あとはなんつっても佐藤浩市がいたから最後まで見れたと言ってもいい。馬の乗りこなしを含めても格好良かった。