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『ヴィオレッタ』感想

ヴィオレッタ

ヴィオレッタ

  • メディア: Prime Video

監督の実話が元になっているらしいのでこう書いてしまうのもなんだけど、話の内容は予想の範囲内に収まっているし淡々と描かれるので刺さりそうで刺さり切らなかった。それでも面白かったとは思うし、アナマリア・ヴァルトロメイがあまりに美しいので鑑賞用と割り切っても最後まで見れる強みもある。顔はもちろん、長い金髪から覗く凶暴な眼差しや艶かしく長い手足も美しい。ヴィオレッタの退廃的な美貌を引き立てる衣装や調度品も良かった。

自分勝手で歪な母親を演じたイザベル・ユペールも圧巻で、幼いヴィオレッタの持つ美貌と「ヴィオレッタの母親」であることに固執する姿がおぞましくて最高。娘を消費することでしか「特別な自分」を保てない女だから「母親」には向いてなさすぎるんだけど、自分は母親として娘を愛していると思い込んでいるのが地獄。アンナがヴィオレッタにしていることは性的虐待の一種だと思うけど、ヴィオレッタがアンナとの関係を「近親相姦」と言ったのも頷けるものがある。まさか本当にアンナが近親相姦の末に生まれた人間だったとは思わなかったけども。

最後はアンナに反抗するかのような外見に変えたヴィオレッタにも驚いたけど、面会にやってきたアンナの相変わらずの「愛してるの」の言葉はなんだか哀れな怪物の咆哮じみていて、そこから森に向かってヴィオレッタが一目散に逃げていく光景が爽快だった。どこまで逃げても彼女は母親からは逃れられないんだろうな、てのが分かるからこその一瞬の自由のようで切なくもあり、ぐっと来るエンディングでした。