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『母なる証明』感想

母なる証明(字幕版)

母なる証明(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

知的障害者の息子が殺人容疑で逮捕されてしまい、その罪を晴らすために母親が奔走する話。事件の真相を追うサスペンスではあるんだけど、それ以上に息子の無実に縋る母親の愚かしさを描いていたのが面白かった。母親を演じたキム・ヘジャの表情もなんつうか異様で、その顔を何度もアップで抜くのですんげえ印象に残る。血とか脂とか雨とか尿とか、とにかく液体の撮り方にもいちいちぞわぞわさせられる。

母親の行動で強烈だったのが、死んだ目で踊る冒頭、トジュンの立小便の痕跡の隠蔽、ラストのジョンパルとの面会あたり。特に三つ目のシーンはジョンパルには「息子の冤罪で苦しむ母親」がいないことを知り、そうして得られた身勝手な安堵に泣くのがおぞましくて最高。

トジュンは知的障害者を装っているんじゃないかと最初は疑ってたんだけど(ジンテもそのことに気づいているのだと思っていた)、アジョンを殺した時の反応を見るに違うっぽい。だとしたら親孝行ツアーのバスに乗る母親に鍼を返すシーンも他意がなかったのだと捉えられるけど、こちらの方がより恐ろしく見えてくる。更に言うと息子が火事の真相に気づく可能性もあるから、母親にとってトジュンは爆弾にもなってしまったのか。トジュンが咄嗟にアジョンを殺し、母親が咄嗟に目撃者を殺したことで、親子の関係はより強固に、より歪になってしまったように思います。ちなみに近親相姦は最後まで匂わせるだけで終わったけど、私的にはこの二人の間に肉体関係はないほうが親子の異常さが際立つから好み。