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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『殺人の追憶』感想

連続強姦殺人事件という重い内容なのにコメディ要素もあるから、どーゆーテンションで見たらいいのか分からず話に乗り損ねてしまった感が。

とにかく現場保全すらまともに出来ない杜撰な捜査が目につくんだけど、新聞紙に載せる写真を撮る時に刑事三人でポーズを取ったり、隠毛が現場に落ちてないから犯人はつんつるてんだろうと推理してパクが銭湯で他人の股間をチェックしたり、自白の強要が無駄だと悟ると霊媒師に頼り出したり(しかも怪しげなアイテムまで買ってるし)、なのにそんなパクが現場に一人で来たソを見て「科学捜査をしろってんだ」と毒づいたりと、滑稽な警察の姿を延々と見せられて中盤まではダレていた。コメディとして見ても皮肉として見ても、私にはあんまし面白くなかったんですよね。捜査の進展も変な方向に飛びがちで散漫な印象を受けてしまう。

ソというキャラクターに興味が持てなかったこともハマれなかった理由の一つで、だから最初と最後とでパクとソの振る舞いが逆転する現象にもピンと来なかった。一方、すぐ手や足が出るし自白強要も当たり前にやるパクはクソ野郎なのにそこが面白いキャラクターだと思ったけど、これはソン・ガンホの鮮烈な存在感によるところが大きいのかもしれない。ラストの穏やかな葦原の景色の中で見せる表情も良かった。私にとって未解決事件てのは「哀しいニュースの一つ」と認識して終わってしまうことが多いんだけど、このラストシーンは「真犯人が今でも野放しになっている状況とはどういうことか」を僅かでも想像させてくれた。歯切れの悪い終わり方ではあるけど、こういうアプローチから攻めたエンディングは好き。