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『マッドマックス / 怒りのデス・ロード』感想

『マッドマックス』シリーズ最新作にようやく追いついたけど、評判通りたいへん面白かった。三作目の『サンダードーム』は二作目と話の構図がほぼ一緒で焼き直し感があったけど、『怒りのデス・ロード』でも三作目の構図を拾っている。なのに今回は焼き直し感がまったくなくて、むしろ恐ろしくクオリティが高かったのがすごい。一作目からの要素を取り入れ、三作目の美味しいところを拾い、二作目のテンションを更に加速させた感じで、とにかくすんげえハイカロリーな映画だった(ショットガンを構えるばあちゃんとかマックスが「俺の車だ」と言うところとか、前作ネタがちょいちょいあったのも嬉しい)。ストーリーがないと聞いてたけどそんなこともなく、各キャラクターのドラマがしっかり描かれていたのも良かった。あと単純にブルーの空とオレンジの荒野と赤い炎や血との組み合わせが好きなんだな。ゴテゴテに飾り付けられた車体のデザインもたまらんよね。

一番印象的だったのはやはり隻腕のフュリオサで、シャーリーズ・セロンが逞しく演じていてまさにハマり役だった。今回の話は『サンダードーム』の子供たちの役割や設定がウォー・ボーイズや子産み女にほぼそのままスライドされていたけど、フュリオサは特に上手く継承されていたなと。ビジュアルもいいよね。クライマックスで腹を刺されたのに気迫でなんとかしようとする表情にぐっと来た。今まで見てきた中で一番シャーリーズ・セロンにぐっと惹かれた瞬間でした。

ニュークスはまさかあんなに活躍するキャラクターになるとは思わなかった。ジョーの支配から目覚めるポジションなのが美味しいし、ジョーの嫁の一人とのジェットコースターな恋も笑った。そしてジョーに言いくるめられて英雄として死ぬことを求めていたニュークスが、最後には自分の意志で敵もろとも死ぬのがぐっと来るんだよな。ウォー・ボーイズの「オレを見ろ」がまさかあんな重い台詞になって再び登場するとは……。

今回の敵であるイモータン・ジョーは、暴君なんだけど自分で運転してるところが意外で面白かった。あの手のキャラって運転は配下の者に任せて自分は後部座席でふんぞり返ってるイメージが強いんですよね。火を吹くギターと太鼓隊という意味があるのかよく分からん部隊がいるところもバカバカしくて嫌いになれない。ずるいでしょあんなん。

主人公もいい。序盤で爆走する車のフロントに括り付けられる姿には爆笑した。あれをやる無法者は過去作にもいたけどただの嫌がらせで終わったのに、今回は輸血袋というとんでもない役を押し付けられてんのが酷くて笑っちゃうんだよな。トムハはこういう酷い目に遭いながら「くそったれ!」とキレる役がたいへん似合うなと改めて実感した。

それと家族を失ったマックスの苦悩は今までは具体的には描かれてこなかったけど、幻覚のフラッシュバックによって今回ようやく可視化されていたのが印象的だった。でもその幻覚の中の命を失った娘という存在に、彼は命を救われるのがぐっと来るよね。それでもマックスはいまだに亡霊に囚われたままなんだろうけども……。

お馴染みカーチェイスもきちんとパワーアップしていて毎回すげえなと唸らされるんだけど、今回は「支配からの逃走劇」から「尊厳の奪還劇」へと方向転換するのが熱かった。やっぱり主人公は攻めてこそだよなと。トムハの野生児のようなマックスは本当に格好良かった。満足。