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『帰ってきたヒトラー』感想

帰ってきたヒトラー(字幕版)

帰ってきたヒトラー(字幕版)

  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: Prime Video

前半は現代にタイムスリップしてきたヒトラーが様変わりした世の中に翻弄される姿をコミカルに描いて笑いを誘い、中盤以降はテレビやネットを駆使して演説するヒトラーに現代のドイツ国民の方が魅入られていく様に恐怖させられるという、構成が最悪で最高な映画だった。

エキストラですらない一般人にヒトラー役が国への不満を問いかける内容のドキュメンタリーパートが挿入されるのは驚いたけど、今の時代であっても──というよりネットという手段がある今の時代だからこそ、ヒトラーのような強力なカリスマを持つ人間がいたら危ういのだということがよく分かる。何より映画を見ていた私自身が楽しんでいたし、ヒトラーに魅力を見出してしまったのだからこれ以上の説得力はない。ヒトラーは確かに今では極悪人だと認知されているけど、作中でも言っていたようにヒトラーを選んだのは当時のドイツ国民であり、私はそのドイツ国民の追体験をさせられているのだと気づいた瞬間はゾッとした。ヒトラーが何度か「運命だ」と言っていたのも印象的で、かつてのドイツ国民がヒトラーに国を託したのもヒトラーがタイムスリップして来たのも現代でもヒトラーが国民を虜にして行くのも、それらすべてが "運命" なのだと言われているようで恐ろしい。終盤のザヴァツキとヒトラーの屋上でのやり取りにも見事に騙されたし、ヒトラーが本人であることを訴えたザヴァツキが精神病院にぶち込まれてしまうという背筋の凍るようなオチも含めて素晴らしかった。

ヒトラー役のオリヴァー・マスッチの演技も、ヒトラーをよく知らない私ですら何故か「ヒトラーって感じがする」と思えてしまう有無を言わせぬ謎の説得力があり、よくこんなすごい人を見つけてきたなと。ちなみに例の映画のパロディは見事にハマっていて、呑気に笑っていいのかどうかはさておいてやっぱり笑ってしまった。