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『キング・オブ・コメディ』感想

The King of Comedy (字幕版)

The King of Comedy (字幕版)

  • メディア: Prime Video

現実と妄想の区別がつかず都合の良いことだけを認識する大迷惑な男が、キング・オブ・コメディになるまでの過程を描いているのだけど、狂人によるサクセスストーリーとしても成立してしまうのがすごいなこれ。ラストの出所後のエピソードは現実と妄想のどちらでも解釈可能だけど、パプキンにとってはどちらにせよハッピーエンド確定なのが強すぎる。ジェリーは人気者になったことで苦しんでいたけど、パプキンはそういった苦しみとは無縁なんだろうなとも思えるのがまた……。この極端なまでのポジティブ思考は少し羨ましい。

パプキンにとってはラストの解釈は無価値なのかもしれないけど、私の好みで語るなら現実オチを推す。映画の中のパプキンをずっと滑稽な男として哀れみの目を向けてきたのに、そんな彼が大勝利を収めてしまうという、この何とも言えない苦々しさが他ではなかなか味わえない代物で良かった。ラストの哀しみに満ちたショーも圧巻で、それがまた現実たり得る理由の一つになれるところも最高。あとは何気にガラスや鏡に映り込むパプキンの画が多かったのも、ちょっと心を騒つかせてきてたまらないものがある。