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『ジョン・ウィック / チャプター2』感想

凄腕の元殺し屋が再び闇社会に舞い戻るアクション二作目。前作以上にコミック的な闇社会ワールドが展開され、妻と犬と車と親友と、今度は家まで失って更にジョンが孤独になっていくのがいい。真っ当な世界に戻りたいのに、才能があるが故にジョンが泥沼にはまっていく様はちょっとした殺し屋版『ゴッドファーザー』ぽくもあり、この手の話が大好物なので今作は楽しめました。アクションも手ブレカメラ演出は増えたけどそれでも見やすいし、何度も投げを決めたり銃を持ち替えたりいちいちリロードしてる様子が入るのも好き。ここはゲームの主人公を見ている気分だった。あと「ジョンによる雑魚狩り」状態だった前作(だからこそスピーディで面白かったのだけど)に対し、今回は強そうなボディガードが登場するのもいいよね。と、このように前作の良かったところをピンポイントに強化しているので、前作も面白かったけど今回は更に好きだな私は。

一番印象的だったのがカシアンとの戦いで、前半では戦闘がホテルの中にまで及んだことで支配人に怒られて二人ともスッ……と大人しくなるのが可愛い。その後、仲良くバーで飲んでるのもシュールすぎる。中盤は人混みの駅構内で歩きながらサイレンサー付きの銃を撃ち合ってるのが最高。授業中に消しゴムを飛ばし合う高校生にしか見えなくて笑わせにかかっているとしか思えん。地下鉄で同じ車両に乗り込んでゴトゴト揺られながら延々睨み合ってるのもじわじわ来る。しかしジョンはよく車に撥ねられるな本当に。それでも戦い続けるので耐久力もモンスター級やんけ。

今回の敵となるサンティーノはなかなかのクソ野郎でした。いきなりロケランぶっぱしてジョンの家を燃やしてるのは豪快すぎて笑ってしまったけども(犬が無事で良かった)。ジョンも引退するためとはいえ何故こんな男の力を借りたのか。そんなサンティーノを守るアレスは出番は多くはないものの、存在感もあって印象に残るキャラでした。しかしロシア語とイタリア語はまあ分かるけど手話も堪能なジョンって一体……。あと後半に『マトリックス』でもキアヌと共演していたローレンス・フィッシュバーンが登場したのは驚いた。ただ、この人とのシーンはちょっと説明台詞が多くて不自然だったのが残念だな。

ところで今回から誓印とか主席連合なんてワードも登場し、ホテルを含めた闇社会のあれこれが開陳されていくジアナ暗殺準備パートなんてめちゃくちゃワクワクしたよね。銃のソムリエ、防弾スーツの仕立屋、見取り図も完璧な鍵屋、更に貸金庫まであるし、闇社会独特のネットワークも面白い。殺し屋もバイオリニストはともかく力士まで出てきてトンチキ度が倍増してるのが最高。というかなんであんなに殺し屋が潜んでるんだあの世界は。おかげでジョン無双が堪能できて楽しかったし、噂の鉛筆での殺し方も予想とは違った使い方もしていて面白かった。

しかしこうしたトンチキワールドの中でジョンが追い詰められていく様はちょっと悲痛で、特に鏡張りの部屋での戦闘は復讐中毒を指摘するサンティーノの言葉と共に、ジョンが銃を構えて殺戮する様をジョン自身にも見せつけて「こういう生き方しか出来ない」のだと意地悪く告げているようでなんとも言えない気持ちになった。だからこそ、ジョンは最後に敢えてルールを破ったのだと思います。これまで何度も語られてきた、仕事をこなす時の「ジョン・ウィックの断固たる意志」が、今度は自分を縛ろうとする闇社会への抵抗に注がれる。追放するしかなくなったことを残念に思いながらも、自分を抹殺しようとする者たちに皆殺しを宣言するジョンを満足そうに見守るウィンストンの表情がちょっとぐっと来るんですよね。