妻の形見の子犬をロシアン・マフィアのボンクラ息子に殺された失意の元殺し屋が、復讐のために再び銃を手に取るアクション。真っ先に絶賛したいのがアクションシーンが見やすい点で、手ブレカメラは嫌いだし激しいカット割りも疲れるのでストレートに格好良いアクションを見せてくれるだけでも好感度がクッソ高いんだよな。銃撃と格闘術を合わせたようなジョンのスタイルも、昔見た『リベリオン』のガン=カタを思い出した。正確無比なヘッドショットも無慈悲でたまらんよね。死体をスルーする警官ジミー、スマートに仕事をこなす掃除屋チャーリー、殺し屋御用達のコンチネンタル・ホテル、あの世界で使われているらしいコイン、というガジェットの数々も美味しい。シンプルに面白かった。
しかしあのビーグル犬は可愛かったな本当に。「犬が殺されたから」とだけ書くとシンプルだけど、ヘレンとの生活のために殺し屋を辞めたのにヘレンが病死し、そのヘレンが孤独なジョンのためにと贈った犬を殺されたんだから復讐への動機としてはものすごく説得力がある。ジョンにとってデイジーという子犬は、妻との最大にして最後の繋がりとも言える存在だったんだから。また、人が殺されるよりも愛らしい生き物が殺されるほうが私としてはたいへん堪えるので、ジョンの怒りには感情移入しやすかった。
しかし見る前は孤高の殺し屋による無双を見せられるのかと思ってたんだけど、実はなんだかんだでジョンは味方が多いんだよな。何しろ敵のヴィゴですら抵抗はするんだけどそれでもジョンの復讐を受け入れている節があり、息子の愚行を知った時点で全滅は覚悟していたんじゃないか。ドラ息子がジョンに関わったことを呆れてもいるけど、それはそれとしてやっぱり息子を守ろうとはしていて、でも無理だろうなとほぼ諦めてもいるところが味わい深い。このように、ジョンを知る人々の反応が味方にしろ敵にしろどれも面白いんだよな。序盤に出てくるオーレリオも出番は一瞬なのに味があって好きだった。マーカス役のウィレム・デフォーといいオーレリオ役のジョン・レグイザモといい、サブキャラクターのキャストが渋いのも最高。パーキンスは安っぽい峰不二子みたいだな、と思ってたら最期が呆気なさすぎてちょっと笑ってしまったけども。
ただ、最後にヴィゴと殴り合いを始めるのは蛇足だと思った。せっかくスピーディに殺してきたのにここでわざわざステゴロなんですか、という落胆が大きかった。持ってる銃でそのまま撃ち殺してくれた方が断然好みだったな。
この映画はとにかく「因果応報」の四文字が浮かぶ。ジョンの犬を殺したヨセフや掟を破ったパーキンスもそうだけど、ジョンがかつては闇社会に生きていたことが妻や犬を不幸にしてしまうのだとヴィゴが指摘していて、そのことを誰よりもジョンが理解しているのが少し切なかったです。
