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『J・エドガー』感想

J.エドガー (字幕版)

J.エドガー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

悪くはなかった。画面がほぼ暗く、口述筆記と共に過去が淡々と描かれるから単調な印象を受けるし、老齢の人物を演じるキャストのメイクもちょっと不自然で、フーバー長官の功績やトルソンとの関係も深く掘り下げられてはおらず、アメリカ史に疎い私のような浅学な人間にはついていくのに苦労するところもある。

ただ、エドガーという一人の男の物語として見ると結構面白かった。どこまでが真実なのかはさておき、エモーショナルな場面がトルソンとのやり取りに集中していてそこもぐっと来る。特に二人で休暇に訪れた時の激しい喧嘩と、キスをして部屋から去ったトルソンに一人残されたエドガーが愛を告白するところは、告げたくても告げられない彼の想いが溢れていてすごく良かった。母親からの支配に追い込まれていくところや、母親のドレスを纏って母親の死を嘆くシーンもいい。

ディカプリオの演技を目当てに見始めたようなものだけど、アミハマも良かった。毎日一緒に食事を共にする約束を取り付ける時の期待に満ちた眼差しとか、女優に言い寄られているエドガーを嫉妬の目で見つめるところとか、他人の恋文を読み上げるエドガーに戸惑って揺れる目とか。でも一番刺さったのは、最後に寒そうにしているエドガーの死体に毛布を必死にかけてやる寂しい背中かもしれない。エドガーが死ぬ直前に、エドガーの語った過去は虚栄に満ちているのだと糾弾するシーンが良かったから尚更効いた。

ヘレンとの静かな信頼も心地良くて好きだったんだけど、もうちょい描写が欲しかった。エドガーの死を知らされてすぐに機密ファイルを持ち出すシーンが好き。

どちらかが死ぬまで寄り添い続けたエドガーとトルソンの関係は良かっただけに、そこにフォーカスを当てた作品だったらよりエドガーという人間に奥行きが出ただろうし、もっと好みの作品になったかもしれない。惜しいな。