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『イット・フォローズ』感想

捕まったら殺されるという正体不明の何かに追われるジェイと、その幼馴染みたちとの関係を描く青春ホラー。

セックスをきっかけに感染(?)すると "それ" が来るんだけど、人に移せばターゲットはひとまず相手に変わるし物理攻撃も効くし動きも鈍いのである程度の対策は可能で、でも「いつ、どこで、どんな姿で」来るか分からないから油断は出来ない、というバランスが好みだった。追われてる時は怖いだろうし、人に移しても真っ当な人なら罪悪感も抱くことになるからしんどいだろうなと(しかも死なれたら困るから説明しなければならない)。というか一度感染したら、またターゲットにされる可能性に怯えなければならないんだよな一生。「怖い」以上に「厄介」な存在だな本当に。ぐるっとゆっくり回る長回しなど、全体的に緩慢で不穏なカメラワークも良かった。

ラストのプールでの "それ" との攻防は予想以上にハラハラ出来たけど、ジェイが撃った時は殺せなかったのにポールが撃つと倒せたというのもおかしいし、そもそも銃で倒せるならとっくにやってる人はいるはずだから倒せたわけではないのだと思う。だからジェイとセックスをした後のポールが娼婦らしき女を見ているのも、「彼女たちに移せる」ことを考えたのではないかなとも。というか移したんだろうな。まあ安易に移してもすぐ戻って来るのだけども。

しかし冒頭の被害者は惨殺される直前に父親と電話していたし、グレッグも自分の母親に擬態した敵に犯されて死に、ジェイも最後は父親の姿をした "それ" に襲われていた。終盤に幼馴染みたちと郊外に行く時もヤラが親の話をしていたし、何かと「両親」が出てくる。でもジェイを始めとした幼馴染みたちはみんな親を信用しておらず、むしろ "それ" が具現化することで襲って来る。これには何か意味があったのかもしれないけど、私には分からなかった。

"それ" の正体に関しても明確な答えは与えられないけど、そこが逆に良かったと思う。ただ、ヤラの『白痴』の朗読から察するに「死」をイメージした存在っぽいんよね。ラストで手を繋ぐ二人の背後の人影はたまたまかもしれないしポールを狙う "それ" なのかもしれない、と匂わせて終わるところは好き。