ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『犬神家の一族』感想

遺産相続が絡む一族の愛憎劇を描くサスペンス。金田一というと「じっちゃんの名にかけて!」が真っ先に思い浮かぶし『犬神家』も湖に足が生えることくらいしか知らないで見たけど、身内同士の醜い争いを見るのが好きなのもあって普通に面白かった。でも一番印象に残ったのは内容より大仰な映像演出で、沈んでいくボートに乗っていた珠世を助ける序盤のシーンからコマ送りのような謎演出が入っており、ネット回線の問題かと思って何度も巻き戻しちゃったでしょうが。他にも回想などでいちいち異様な演出が見られるんだけど、正直言って私にはどれも野暮ったく感じた。とはいえ不気味な雰囲気は確かに出ていたので、私の好みはともかく成功はしているのだろうと思います。『エヴァ』のような文字を大胆に押し出したオープニングも良かった(たぶん庵野監督が影響を受けたのだろうけど)。ちなみに役者の演技もいちいち大仰なんだけど、登場人物が多くミステリというジャンルを扱うとどうしても個々の描写に限界があるので、大仰なくらいで良かったのかもしれない。

過剰な演出もあって印象に残った画は多いけど、菊人形の首とすげ替えられていた佐武の生首、天窓にへばり付いていた佐智の形相、湖に浮かぶ静馬の両脚、と死体発見時のインパクトは強烈で面白かった。あと金田一が走るシーンがなんかいいんだよね。私はやっぱりキャラクターが全力で走るところを見るのが好きらしい。

しかしラングドン教授シリーズを先日見たばかりなのもあり、探偵役のキャラクターは描くのが難しそうだなとつくづく思った。謎解きで物語を進行させないといけないからか、犬神家以上にキャラクターをアピールする余裕がない。尺の限られる映画だと尚更なんだろうな。おかげで金田一がどういう人物なのかよく分かっていない。それでも金田一の飄々としているところは辛うじて出ていたし、珠世の美しさも犬神家のおどろおどろしさとの対比もあって輝いていたように思います。しかし珠世は本当に災難だったなと。わざわざ火種をばら撒いて死んでいくとかなんつー大迷惑な爺様だ……。