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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『インフェルノ』感想

人類は半分に減らさにゃならんのだと言い張ってバイオテロを目論む実業家の企みを、軽い記憶喪失で混乱しつつも阻止しようと奔走する宗教象徴学の教授を追うサスペンス。とにかくまどろっこしい話だった。敵のやることが回りくどすぎるんですよ。そのくせテンポは相変わらず早いし、前半のフラッシュバックの多用にも酔った(でも『シャイニング』のエレベーター前のシーンのような、顔を黒いベールで覆う女の背後から大量の赤い爆流が溢れ出すところは見惚れた)。シエナも謎解きが得意という設定があまり活かされてなかったし、彼女との逃亡劇も面白くなかったな……なんでだろな。やはりまどろっこしい展開のせいかもしれない。

ただ、相変わらず観光映画としては素晴らしい。今回はイタリアやトルコが主な舞台になるけれど、フィレンツェのヴェッキオ宮殿の荘厳な壁画とイスタンブールの地下宮殿の赤い水路の美しさが印象に残っています。それだけにヴァエンサがヴェッキオ宮殿の天井をぶち破って墜落死したり、地下宮殿でアクションシーンを見せられたりした時は何とも言えない気持ちになった。ラングドンなんて戦闘員でもない教授のおっさんなのに、狂信者と水中バトルする羽目になってるのがなんか泣ける。

戦闘と言えば、シムズがブシャールを仕留める時の手際が良すぎるのは笑った。ゲームに出てきそうなアサシンか何かと思ったじゃないですか。しかしシムズ総監の「便利屋」とかいう都合のいい組織も、雑にラングドンを殺そうとしたりしなかったりでよく分からんな。CIAみたいなことをしてるWHOも謎だったけど、実際でもああいうことをやってるのかもしかして。

シエナについては最初から怪しかったので予想通りではあったけど、途中でブシャールの怪しさが露見してからは一旦騙されかけた。ブシャールがシムズにあっさり殺されたのですぐに思い直したけども。シエナが本性を表してからの展開はそもそもゾブリストの主張が浅いのもあり、その彼の意志を継ごうとする彼女の追跡劇も「めんどくさいだけの展開」という印象で見続けるのがかったるかった。でも「圏外」オチはちょっと笑う。

ラングドンとエリザベスの関係は、大人の苦い恋愛関係の残滓を漂わせているのがとても好き。二人の過去はそう多くは語られないけど、あれくらいでいいなと思える。腕時計が戻ったのも何よりでした。