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『天使と悪魔』感想

キリスト教の総本山で起きる連続殺人とテロ計画を阻止せんとヴァチカンやローマを駆ける宗教象徴学の教授を描くサスペンス。前作同様RPGみたいな進み方をするし、主人公のキャラクターはやっぱり薄く、そのくせ黒幕は露骨なほどですぐに分かる。が、それ以上にたいへん面白かった。今回は「一時間ごとに刈り取られる四人の枢機卿の命」と「反物質による爆発」という二つのタイムリミットがあるからスリリングだし、サクサク謎を解いて次から次へとあちこちの教会にラングドンが向かう様がスピーディで物語が停滞しない。緊張感がいい具合に持続するしちょうどいいところで音楽と共に話を盛り上げてくるものだから、尺は長いのに退屈しなかった。威風堂々とした歴史的建造物も堪能できるので、今回もヴァチカンやローマの観光映画として楽しめるのが美味しい。そして「宗教と科学の対立」という普遍的なテーマを、ラングドン教授シリーズならではのアプローチで描かれていたのも良かったなと。実はあんまり期待してなかったんだけど、良質の娯楽作だったのは嬉しい誤算でした。

今回一番気に入ったのは主役とヒロインだけが活躍するような物語になっていないところで、例えば後半にラングドンが地元の警官二人を叱咤してナヴォーナ広場に向かうところとか噴水に沈められた枢機卿を周囲に助けを求めてみんなで引き上げるところとか、名前すら明かされない人々が手を貸してくれるのがささやかながらも熱い。だから警官が殺された時は哀しかったな。ヴァチカン警察のオリヴェッティも、ヴィットリアが勝手に重要な書物のページを破って拝借してきたことを知った時のリアクションが面白かった。彼はいいキャラしてたから、殺された時はショックだった。スイス衛兵隊のシャルトランも厳重な保管所での監視や思わぬ翻訳作業(ラングドンがイタリア語を履修してないのは違和感があるけども)、空気の供給がなくなって二人で殺されかけたりと意外に濃いシーンがある。こうして主人公だけで何とかするのではなく、現地の人々の助けを得るのがいいよね。周りを散々利用した挙句、容赦なく切り捨てるカメルレンゴとも対比になっていたように思います。

リヒター隊長もラングドンとの絡みこそ多くはないものの、彼なくして真実には至れなかった。ラングドンは自力で黒幕の存在を見破れなかったけど、彼は探偵ではないし必要以上に主人公を活躍させるよりいいと思うな私は。真相はカメルレンゴによるマッチポンプだったけど、神を愛し、科学を受け入れられない男が、科学によって悪事を暴かれるのは皮肉が効いていて最高だった。だからこそ、ラストのシュトラウス枢機卿とのやり取りが効いてくる。

「宗教には欠点もある。それは人間に欠点があるからだ。この私を含めてね」

名言でした。ところでラングドンミッキーマウスの腕時計をしてたのは完全に不意打ちだった。サスペンスフルな展開の最中だったから余計に。笑ったやんけ。