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『アイ・フィール・プリティ! / 人生最高のハプニング』感想

容姿にコンプレックスのある女が頭を強打し、自分が絶世の美女になったと思い込むことで変わっていく姿を描くコメディ。容姿を偏重するようなルッキズムからの解放をテーマにしつつ、笑えないところも多かった。このコミカルなシーンの数々は、体型への揶揄が根底にあることで生まれる「笑い」だと思うんですよね。私も容姿に自信なんてないし、かと言って自分が偏見のない人間だとはまったく思わないけど、なんというか容姿をテーマにした作品は安易に扱うと難しいよねと。ところでナオミ・キャンベルにそっくりな人がいるなと思ったら御本人だった。びっくりした。

この作品で誰よりも古い価値観に囚われているのは主人公であるレネーなので、「美人」になったことで傲慢になる中盤が痛い。自分がモデル体型になったと思い込むまではいいけど、その勘違いから自意識過剰な振る舞いで暴走する勘違いぶりが地獄。「美人は絶対に何事も上手くいく」という思い込みもまた偏見なんだな。まあ今まで差別されてきた人が、立場が変わった途端に今度は自分が差別する側になってしまうというのはあるあるだけども。

それでもクライマックスのプレゼンでレネーはようやく魔法なんて最初からなかったことに気づくんだけど、ここはもっとドラマティックにしても良かったと思う。ただ、ショックは大きいだろうにあの場ですぐ上手く繋げて大成功へと導いたので、実力はあるんだろうな。強引なエンディングだったけど、見た目だけに囚われてはいけないけど見た目が大事であることも事実だし、ありのままの自分でいよう=ダイエットしなくていい、というわけでもないからダイエットを続けているのはいいと思った。そもそもレネーが傲慢になったのは努力もせず痩せたと思い込んでいるところにもあったと思うので、痩せようと努力するのは健康的だし、私自身がダイエットを頑張った過去もあるから素直に応援できる。しかしレネーは容姿に自信がないはずなのに、最初からやたら短いスカートを履いてたのは違和感あったな……。

周囲の登場人物も、特に「男らしさ」に乗れないイーサンはいいキャラクターだと思いました。ただ、高い声にコンプレックスを持つエイヴリーやちょっと親密になるグラントは物語に上手く活かせてないよーな。ミシェル・ウィリアムズは良かっただけにもったいない。