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『パーム・スプリングス』感想

イムループして永遠の一日を繰り返す男女のロマンティック・コメディ。キービジュアルからも伝わってくるように砂漠のリゾート地というロケーションがいいし、ストーリーも『ハッピー・デス・デイ』のロマコメ版という感じで予想以上に楽しめた。タイムループを扱う作品は大量に溢れているけど、すでにループに囚われたナイルズはすべてを諦めており、そこにサラが新たに加わるという切り口がいい。周囲にもちょっとばかり濃いめのキャラクターが何人かいて、特に謎の老人ロイは強烈でいいアクセントになっていた。まさかJ・K・シモンズが出てくるとは思わず驚いたけど、ここでもいい役者だなと実感。主役の二人は初めて知ったけどアンディ・サムバーグはハマり役だったし、クリスティン・ミリオティのすんげえ大きな目も可愛い。恋愛映画は主役二人をちょっとでも好ましく思えないと一気に厳しくなるけど、二人ともダメなところはありつつも見ていて不愉快になることがなかったのも良かった。二人を素直に応援出来る、てのは大きい。

面白かったのが序盤にナイルズがループの最中に色んな人とセックスしまくった話をしていた時で、彼はゲイでもないのに男とセックスしていたことも暴露する。それは単なる下ネタトークではあるんだけど、それだけ彼がループする毎日に飽きていることがよく分かると同時にナイルズのキャラクターも伝わるエピソードになっているのが上手いなと。さり気ないけど好きなシーンでした。砂漠の夜に二人で恐竜を見るところも不思議なロマンチズムに満ちていてとても好き。あの恐竜がなんなのか私にはさっぱり分からなかったけど、そもそもナイルズがループに囚われたきっかけも謎のまま終わるので深く考えなくても良さそう。ループからの脱出方法も雑にゴリ押してて笑ったもんな。

サラがループ脱出方法を見つけてからの二人のすれ違いも面白い。愛してると告げるナイルズに「何故そう言えるの? 私たち二人しかいないのに」「元の世界でも大勢の中から私を選ぶの?」と鋭く問うサラがいい。この答えは終盤に出すんだけど、その時のナイルズのグッダグダな告白も良かった。

ちなみに結婚式の前夜に花嫁の姉であるサラと新郎エイブが寝た件はどちらもアホなんだけど、二人とも本当に後悔しているのなら敢えて花嫁には言わない、という選択肢はありだと思う。罪は白日の下に晒した方がいいという考え方も分かるしその方が映画を見ていて私はスッキリするだろうけど、罪を告白するルートではサラが楽になるだけだったもんな。サラがループからの脱出を固く決めたのは、毎朝起きるたびに自分の罪を直視させられるから、てのはかなり大きかったんじゃないかなとも。

あと脇役で出番は少ないんだけど、ナイルズの彼女として登場するミスティも面白かった。ナイルズが混乱するミスティの台詞をいちいち同時に言うもんだからますます荒れたりとか、ナイルズに別れを告げられると振ったのが自分ではないことの方にショックを受けて厄介なキレ方をしたりとか、とにかくクズで輝いてて最高だった。こういう現実ではお友達になりたくないタイプのどうしようもない女は大好物です。

ロイはループに巻き込まれてナイルズを殺しにかかってくるじいちゃんというだけでも面白いのに、死にかけたのを機に心境が大きく変わり、老いた自分よりまだ年若いナイルズを不憫に思うようになるのがいい。そうして家族と過ごす永遠の一日を楽しむ彼はループに残されたままになったけど、それでも最後はちょっと寂しそうで、でもそれ以上に嬉しそうだったのが良かった。これがエンドロールの最中に差し込まれるエピソードになっている、てのがまたいいんですよね。