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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『グランド・ブダペスト・ホテル』感想

殺害された老マダムの莫大な遺産を巡り、ホテルのコンシェルジュとロビーボーイが事件の真相を追っていくコメディ・ドラマ。『ムーンライズ・キングダム』もそうだったけど、とにかく徹底されたファンタジックなカラーコーディネイトやカメラワークで彩る箱庭ような世界が楽しい。テンポ良く進行していくストーリーも毒を含んでいて面白かったし、音楽も良かった。キャストもすんげえ豪華で、エンドロールを眺めていると豪華な名前の多さに驚かされる。キャラクターは多いけど主要人物はみんな強烈なので、特に混乱もなく見れた。特に主役のグスタヴと彼に付き従うゼロは良かったな。この二人ですら掘り下げ自体はあんまりされておらず軽さは否めないけど、その分テンポやキャストや美術の力で上手く補っていたように思います。赤とピンクが印象的なキービジュアルを一目見た時から好みの作品だろうなという予感はあったけど、実際見てみても面白かった。

とにかくハイテンポで進むんだけど、それでも語りたくなるような場面はいくつもある。序盤だと遺書を読み上げた後にドミトリーやジョプリングにグスタヴやゼロが順に殴られるシーンはクスッと来たし、かと思えばジョプリングがコヴァックスの猫を窓から放り投げて殺したり、ドアにコヴァックスの挟まれた指が切断されたり、セルジュの姉の生首がどーんと出たりで酷いシーンもあったり、でも終盤のスキーで逃げるジョプリングを競技大会のように追うところとかホテルでの謎の銃撃戦とかはゲラゲラ笑ったし、最後はビターなエンディングに切なくなった。でもエンドロールの右下でダンスを踊るおっさんのアニメーションが入って、そこでまた小さく笑わせてくれるのが優しい。