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『ゴーン・ガール』感想

ゴーン・ガール (字幕版)

ゴーン・ガール (字幕版)

  • 発売日: 2015/03/06
  • メディア: Prime Video

妻の失踪の真相はすぐ読めるんだけど、それは早くに明かされるというかむしろそこからが本番で、更に面白くなっていくのがすごい。特に "ダメ男" ニックと "クソ女" エイミーの関係が刺さった。最初は互いに対して "理想の恋人" を、妻の狙いが判明してからは世間に対して "可哀想な妻と過ちを犯したけど改心した理想的な夫" を、最後にはエイミーに従う形で "理想の夫婦" という偶像を作り上げて最終的には "理想の家族" へと繋がっていく。ゾッとする話ではあるけど、現実でもここまで極端ではないにしろあり得るよなと思えてしまうのが何とも。それほどに「世間の目」が移ろいやすく強すぎるということでもあるのだけども。

母親の執筆した絵本によって偶像化させられてきたという、エイミーのキャラクターもいい。特にニックのインタビューを食い入るように見るシーンと、アンディの会見でアンディにキレるシーンが印象的。でっち上げの日記でも浮気のことには触れないのが不自然なんだけど、彼女にとってニックの浮気はそれほど許せなかったのだろうな。ニックを愛していたからというよりはプライドを傷付けられたことが大きい。それほどに自己愛の肥大した女で、だからこそデジーに頼っておきながら、束縛されると入念な準備までして殺した挙句に「可哀想な女」を演出するための道具にしてしまう。そうしてマスコミの前でドラマティックにニックの元にしれっと戻ってくるのが、まるで花が枯れるまで蜜を求めて次から次へと飛び回る蝶のようでたまらん。ここでニックが忌々しげに「クソ女」と呟くのも最高。最後にエイミーは子供すら利用してニックを激怒させるけど、ニックがそれでも彼女から離れられないのはマーゴも言っていたように彼女を愛しているからで、だから "理想の家族" を演じていくという地獄を受け入れるしかない。そしてエイミーにとっても、自分の本性を知った上で付き合ってくれるのはニックしかいない。この共犯者のような関係性がとても美味しかった。

そしてあまり言及されてなかったけどエイミーの母親もかなり酷い女で、さすが親子だなと感心もしてしまう。"完璧なエイミー" とかよりによってこんなタイトルを付けられたら、そりゃ娘も否定されたような気持ちになってもおかしくないだろうと。そんなエイミーを演じたロザムンド・パイクは言うまでもなく素晴らしかったけど、格好悪い夫ニックを演じたベンアフもハマり役だった。顎を揶揄われて隠す仕草も可愛すぎる。

気になったのはデジー殺害の件で、確かに警察の無能ぶりは最初から描かれていたけど、さすがにデジー殺害を監視カメラだけで誤魔化すのは厳しいんじゃないか。そこまで警察がアホだとは思いたくないな私は。

単純に面白かったというのもあるけど、『ゴーン・ガール』は何よりも性癖に刺さったのが大きかった。オープニングで次々と映し出される街の風景がめちゃくちゃ良くて見惚れていたんだけど、この時点ですでに作品世界に引き込まれていたんだろうな。