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『エターナル・サンシャイン』感想

正反対であるが故に惹かれ合ったのに、正反対だからこそ幻滅し合って互いに関する記憶を消去した男女を描くSFロマンス。ケイト・ウィンスレットが好きで見たようなものだしあんまり期待してなかったけど、意外にも面白く見れた。エキセントリックかつロマンティックな脚本が面白かったし、時系列が少し複雑なのもあってゴチャゴチャしてるけど、そのゴチャゴチャぶりも含めて楽しめたのが珍しいな我ながら。恋愛映画の中では珍しくかなり好きな作品になりそう。

ヒロインが好みのキャラクターだったのも大きい。クレメンタインの大胆なビジュアルや性格は魅力的だったし、唇を舐める癖も可愛い。ジョエルもジム・キャリーが好演していて好きな主人公だったから、この二人を素直に応援できた。二人が出した結論にもぐっと来る。失った記憶を取り戻すような都合の良い展開もなく、互いに記憶を消したことを知った上でまた付き合うことを決めたのがより刺さったというか。この後の二人がどうなったかは語られないけど、少なくともジョエルは「クレメンタインとの記憶を辿る旅」の中で大きく変わったし、恋愛に限らず人との付き合いってのは相性はもちろんだけどタイミングも重要だと思うので、二人の未来が変わる可能性は十分にあるんじゃないか。しかしこれでまた駄目だったら今度こそ恋愛に絶望してそうではあるよな二人とも……。

周囲のキャラクターも印象的で、特に豪華なキャストで固められたラクーナ社の面々はクズばっかで笑った。スタンとメアリーは施術中にジョエルを放置して遊んでるし、パトリックはクレメンタインの下着を盗んだりジョエルの日記を参考にクレメンタインを我が物にしようとしていたのがもう最悪。そしてメアリーとの不倫の記憶を一度は消しておきながら、すべてを知っていて再びメアリーと抱き合おうとしていたハワード博士はかなりのクソ野郎やんけ。奥さんにバレなきゃ伏せておくつもりだったのがまたひっでえ……。

しかし記憶の中の世界の演出は『インセプション』に近い系統で見ていて楽しかった。車が落下したり雨が部屋の中で降り出したり体が小さくなったり台所のシンクで風呂に浸かったり冬の海辺のベッドの中で寝ていたりと、とにかくめちゃくちゃですんげえ楽しかった。違う記憶同士が境界を侵食し合ったままシームレスに移行していくのがまた最高。

でも記憶を消したくなったのは、それほど相手のことが好きだったからなんだよねジョエルもクレメンタインも、そしてメアリーも。だから消してもまた惹かれてしまうんだな。それが切ない。