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『ドライヴ』感想

ドライヴ(字幕版)

ドライヴ(字幕版)

  • 発売日: 2015/02/16
  • メディア: Prime Video

自動車修理工でありスタントマンであり逃がし屋でもある主人公の、一途な恋とバイオレンスとカーチェイスが描かれるサスペンスムービー。寡黙で穏やかに見えた主人公の凶暴性、光と影の切り取り方が印象的な映像、小さな密室でロマンスとバイオレンスが剥き出しになるエレベーターのシーンのような極端な二面性の並列と、コントラストを意識した作りになっているのが面白かった。カーチェイスも派手すぎないところが渋い。音楽も格好良くて、特にアイリーンとベニシオを家に送る途中で寄り道をするシーンとエンディングで流れた「A Real Hero」のシンセサウンドが心地良かった。キャストもライアン・ゴズリングは気怠い男が豹変してしまうという危険な主人公像にハマっていたし、キャリー・マリガンも主人公が惚れてしまうのも分かるほど可愛かった。

バーニーやニーノといった敵の魅力が薄いのは残念だけど、初めから主人公を中心に撮っているので意図してのものなんだろうな。ただ尺が短いのもあるけど、私にはこの主人公を「魅力的なキャラクター」として見るにはそれでも足りなかった。ストリップバーに行ってチンピラをハンマーで殴り出した時やエレベーターでニーノの手下の顔を容赦なく踏み潰した時など、インパクトは十分にあるはずなんだけどな。あんまり喋らないのもあと一歩が及ばない原因の一つだろうけど、寡黙なところが彼の個性にもなっているから難しい。それでもシャノンとのやり取りくらいはもうちょい見たかったけども。

主人公のアイリーンへのプラトニックな愛情は一途ではあったけど、それだけに最後にはシャノンもアイリーンも失った孤独な背中や横顔が切ない。でも "犯罪者の逃がし屋" をやっている彼もまた犯罪者でしかなく、最初から真っ当な幸せが手に入るはずがない。これは結局、主人公とアイリーンは住む世界が違ったというだけの話だった。