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『ザ・ギフト』感想

ザ・ギフト (字幕版)

ザ・ギフト (字幕版)

  • 発売日: 2017/03/08
  • メディア: Prime Video

新居で心機一転頑張ろうと張り切る夫婦と、その夫婦に奇妙なプレゼントを送り続ける得体の知れない男を描いたサスペンス・スリラー。ストーリーもキャラクター像も分かりやすく、でも捻りもあって最初から最後まで楽しめた良作だった。キャストも全員良かったけど、中でも初登場から不気味で妙に存在感のあるゴードがいい。エンドロールで気づいたけど、監督も兼任してるのなゴード役のジョエル・エドガートンて。

基本的にはロビンの視点で話を追うことになるんだけど、面白かったのが不信の対象がゴードからサイモンへと移って後半には逆転するところで、偏見というものが如何に危険であるかを思い知らされる。そして私もロビンに同調して映画を見ていたから、この警鐘は効果的面だった。サイモンが想像以上のクズだったから尚更で、躊躇なく他人を蹴落として後ろ暗い過去は無かったことに出来ると思っているような、独善的な本質が露わになるたびに苦笑いしか出てこない。中盤でもロビンの精神が参っているのに、保身のために「ゴードは無関係」ということにしようとするサイモンがクソ野郎でもう酷い。ここまで見事に最初から最後まで汚職政治家のようなムーブを披露してくれる主人公はそうそういないんじゃないか。胸糞悪いけど、その分面白いキャラクターではあります。

ラストはそうして他人の人生を弄んで来た男の末路としては完璧で、結局ゴードは最後まで幸せそうではないから後味は良くないのだけど、それ以上にクソ野郎が報いを受けるという爽快感が凄まじかった。序盤から子供が欲しいと何度も主張するので、そこに残酷な結果が待っているのではないかと戦々恐々してたら案の定。それもDNAを調べたら解決、とは決してならないのが上手い。ゴードの発言には真実である保証なんてどこにもないから問い詰めても意味がないし、検査をすればロビンは察してしまう。そして「なかったことにしたがる」サイモンの性格なら検査なんてとても出来ない。だから待望の子供の父親がどちらなのか、彼は分からないまま生きていくしかない。ゴードがサイモンの性格をよく知っているからこそ達成できた復讐でした。恋の欲目、身内の欲目はあるにせよ、皮肉なことに「家族である妻」よりも「他人である昔の同級生」のほうがサイモンという男の本質をよく知っていた。

更に、ゴードはサイモンを追い込んでいく手際が良いんだよな。ゴードのしたことを訴えるには証拠がなく、サイモンも後ろ暗いところがあるから声を上げにくい。しかしロビンは利用されただけなので、何も悪くはないだけに気の毒ではあります。いくら気を失っていたとはいえ犯されたら気づくと思うし、ゴードもギリギリ罪にならないラインを保っているようなのでロビンには何もしてないとは思うけども(ただし確たる根拠は何もない)。

「君が過去を忘れても、過去は君を忘れない」という言葉は重い。一度植え付けられた偏見を払拭するのは難しく、だから人生ををめちゃくちゃにされたゴードは、簡単には払拭できない疑念という偏見を植え付けることでサイモンの人生を地獄に変えた。サイモンは自分の子の目を直視出来るのか。出来ないだろうな。鮮やかな復讐劇でした。