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『ボーン・スプレマシー』感想

血塗られた過去から抜け出せず苦悩するボーンが、組織の陰謀の真相と己の罪に向き合っていくサスペンス・アクション。とにかくテンポがいい。ストーリーもサクサク進むし、素人も裏切り者も無能な味方もいないから一人で動くボーンの手際の良さが際立つ。同時に、これまで陰謀の道具として生きてきた彼の孤独感が出ていたのも最高。ちなみにカット割りもテンポがいいんだけど、これは見ていて疲れたな。手振れの鬱陶しいカメラワークのせいでアクションが見づらい。それでも前作以上に楽しめたのは、脚本の良さと正確無比な動きを堪能出来るアクションと、何より前作ではほぼ防戦一方だった主人公が今回は攻撃に転じてぐいぐい敵に迫っていく痛快さを描きながら、それでも彼自身は常に苦悩しているという、ボーンのキャラクターとマット・デイモンの演技によるところが大きいのだと思います。

好きなシーンはいくつかあるけど、アクション面においてはやっぱりベルリンのホテルからの逃亡劇とモスクワでのカーチェイスが圧巻。カーチェイスって主人公はスルスル切り抜けることが多いけど、今回のボーンの乗ったタクシーは派手にガンガンぶつかるのがすさまじい。他にもベルリンのホテルでパメラのいる部屋を割り出すボーンの手口も鮮やかで惚れ惚れしたし、CIAに対してはサラッと有利を提示する場面が多かったのも楽しい。ラストのパメラへの気遣いも粋で、エンディングの入り方も格好良かった。一方で、前回と今回の黒幕だったアボットとの重苦しいやり取りも印象的。

「(マリーは)お前が殺した。お前が彼女の車に乗った時、彼女は終わってた」

「過去からは逃げられん。最後まで。お前がそうだ、殺し屋だ。いつまでもな」

自分を殺人兵器にした元凶の男に何も言い返せないボーンは可哀想だったけど、苦悩するボーンに残酷な現実を突き付けてやれるのもアボットしかいなかった。トレッドストーンの問題に一通り決着がついたのは良かったのではないかな。

でも一番好きなのは、モスクワでネスキーの娘にボーンがボロボロになってまで懺悔するシーンかもしれない。ボーンは自分が狙われる理由というよりはマリーが殺された理由こそが知りたかったのだと、ここでようやく分かってちょっとやり切れない気持ちになった。これはボーンの復讐でもあり、同時に贖罪の物語だったのだなと。