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『レナードの朝』感想

パーキンソン症候群の患者と、患者を救おうとする医師の交流を描くドラマ。とにかく役作りを徹底するデ・ニーロと、安定感のあるロビン・ウィリアムズという名優二人の存在が大きい。ストーリーも分かりやすく、派手ではないけど静かにきちんと盛り上げてくるので見入ってしまった。主役二人だけでなく二人を取り巻く病院のスタッフや家族との関わりも面白い。いい映画でした。

印象に残るシーンが多いのも特徴で、まず夜中にレナードが目覚めて自分の名前を書いた時のセイヤーの笑顔がめちゃくちゃいいんだよな。この時のテーブルでの二人のやり取りは、奇跡が起きたというのに派手なものではなくあくまでも静かに、でも二人とも興奮を隠せてないのがぐっと来る。

新薬を投与してからは、長年の半昏睡状態から覚めたことによる時間の齟齬、体の感覚、今まで介護していた親から子への意識、逆も然りで子から親への意識などが綯い交ぜになって現れてくるのだけど、それらを丁寧に描いているのが良かった。中でもレナードの母親は、序盤はセイヤーを驚かせるほど「強い母親」でいられたのに、レナードが目覚めてからは息子の変化に翻弄されていくのがなんというか……。終盤でも薬が効かなくなって病が再発していくレナードの戦いを、他でもない母親が「負け戦よ」と即答するのは辛いものがある。デ・ニーロが熱演しているから尚更。

それでもレナードが痙攣と戦いながら壊れたセイヤーの眼鏡を必死で直そうとするシーンや、ポーラともう会えなくなることに気付いて別れを告げた後、食堂でダンスをするシーンは泣けた。彼女に抱きしめられるようにして踊っていると、レナードの痙攣が治まってくるのもいいよね。この一瞬の淡い恋の終わりは切ない。

だからこそ、人間と距離を置いていたセイヤーが一歩を踏み出そうとする希望のあるラストで締め括られていたのが効いた。セイヤーの成長物語としても説得力のある作品だったと思います。エレノアも要所要所でセイヤーをサポートしていたし、さり気ないながらもいいキャラクターでした。