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『アメリカン・サイコ』感想

正直サイコ系映画としては物足りないところもあるんだけど、ウォール街で働くセレブによるステータス至上主義なマウント合戦が最高で好きな作品になった。ベイトマンによる殺害シーンのインパクトも凄まじいけど、それ以上に何度も高級レストランの話をしたり女性を物としか見てないような話題で盛り上がったり不穏なSEと共に名刺を披露して張り合ったりと、承認欲求モンスターな同僚とのシーンが面白すぎる。他人の名前を覚えられず間違える人が出て来るところも興味深いけど、みんなそれだけ同じような格好をしてしまうし他人に興味がないんだな。この無関心の世界は『セブン』の街に通じるものがありそう。

それに耐えられなかったのがベイトマンで、彼は「自分を見ろ!」と言わんばかりに全裸でチェンソーを振り回したりパトカーを爆発させたりして暴れ回るんだけど、それでも周囲の関心を得られない。アレン殺害後の隠蔽工作があまりに雑だったのも、自分がやったのだとアピールしたかったんじゃなかろか。最後にはそれらがベイトマンの妄想だったという可能性を示唆されるけど、アレン殺害だけは現実という線もありそう。というのもラストの不動産屋の反応や探偵の存在、秘書が見てしまったベイトマンの絵にアレンがいなかったからなんだけど(私が見落としている可能性はある)、妄想ではなく本当に殺したのにそれでも無関心を装う人々にベイトマンは今度こそ絶望する──というラストだったらすんごい好みの結末だった。ただ、血塗れのバッグを引きずっているのにスルーする管理人は無関心を装うにしても限度を超えているし、アレンと食事したという弁護士の言葉も気になる(弁護士がアレンの顔を忘れていて人違いだった、という可能性もあるけども)。やはりすべてが妄想だったと考えるのが無難なんだろうけど、ここはそれでも上記の結末を推しておきます。

実態のない空虚な世界で苦悩する哀れな主人公は魅力的だったけど、特にクリスチャン・ベイルの振り切った演技が素晴らしい。ハメ撮り3P中に鏡に映った自分に酔い痴れたり音楽を流しながら長々と講釈を垂れたりレインコートを着ながらウキウキで斧を振り下ろすシーンも良かったけど、殺そうとしたルイスが実はゲイだと知って殺せないほど嫌悪し、そのまま逃走するシーンが一番好き。