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『バリー・シール / アメリカをはめた男』感想

卓越した操縦技術と航空知識を武器に、CIAやカルテルからの命令で偵察や密輸で荒稼ぎする実在したバリー・シールという男の半生を描くクライム・コメディ。ディカプリオ主演の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の系統というか、危険なことをやっているのにポップな音楽や映像、テンポの良い進行、何よりトム・クルーズが常にヘラヘラしているのもあって暗くならないのがよかった。ドーナル・グリーソン演じるシェイファーの、冷徹で人でなしなところもいい。義弟JBもインパクトあったな。あと当時のアメリカの情勢なんかをサクサク説明してくれるので、ちょっとした勉強にもなった。

しかしこれは「アメリカをはめた男」というより「アメリカにはめられた男」なよーな? CIAにもホワイトハウスにもいいように利用された挙句に捨てられる様が、こう何というか……。シェイファーも結局、自分がCIAだとは一言も言ってないのがまた姑息です。何も知らされずにバリーに振り回される家族も気の毒だったし、選択肢をなくした上でCIAに振り回されるバリーだってちょっと可哀想に見える時があったけど、まあ元はと言えばTWAのパイロット時代にしょーもない小遣い稼ぎをしていたバリーが悪いともいうか。何より彼はフットワークが軽いのもあって考えなしに動いてたように見えたし、スリルを楽しんでいたところもあったと思う。この辺はトム・クルーズが上手く演じていたけど、特に操縦中のファックとか尻をペロッと出すシーンが好き。資金洗浄が追いつかず、溢れに溢れた大金の管理に四苦八苦するところもブラックで面白かった。DEA、ATF、州警察、FBIと色んなところから身柄を求められるシーンもいい。しかしCIA、メデジン・カルテルと来て、最後にはホワイトハウスからもこき使われる上にこれが実話っつーんだから恐ろしいな本当に。『ボーン・アイデンティティー』に続き、今回もCIAがクソみたいな組織として描かれているのも面白すぎませんかダグ・リーマン監督。