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『22年目の告白 -私が殺人犯です-』感想

東京連続絞殺事件が時効を迎えてから七年後、突如センセーショナルな演出と共に自分が犯人だと名乗り出た男を巡るサスペンス。とにかく上手い脚本を元にきちんと盛り上げてくるし、伏線の回収もしっかりあるのでミステリとしてもサスペンスとしても楽しめた。何より、予想以上に良質な娯楽作品だったのが嬉しい。

前半の曾根崎はクズとしか言いようがないけど、彼は被害者の隠し子とかで真犯人を誘き出すための罠を張っているのだろうな、と予想していたからイライラすることはなく、むしろ真犯人がどう出るのか気になってワクワクしていた。まあ罠だったのは予想通りだったけど、告白本を執筆したのが牧村であり、曾根崎の正体が整形した拓巳だったというのはまったく予想していなかった。しかも山縣先生も関わっていたとは……。序盤のパフォーマンスは曾根崎と牧村と山縣による連携プレイだったのか、と理解できると「たまたま病院に居合わせていた牧村」のシーンは納得が行くようになっているのも面白いよね。

しかし一番盛り上がったのは中盤の曾根崎と牧村が仙堂の報道番組に出演するところで、ここがクライマックスと言っていい。各々の登場人物の真意が明らかになっていく過程がすんげえ面白かった。ただ、この時点でも真犯人はまだ明かされないけど、ここで「もう仙堂しかおらんやんけ!」という感じで分かっちゃうんだな。まあこれも意図的なものかもしれないけども。それでも復讐に燃える拓巳と真犯人として開き直った仙堂の対決はやや冗長気味ではあるものの、役者の過剰なくらいの熱演もハマっていて面白かった。「自分が助かったことに耐えられない」という仙堂と里香は近いものがあるのだけど、仙堂が自分と同じ境遇の者を生み出そうとしていったことで、犯人を装っていた拓巳こそが本当に仙堂と鏡像のような立ち位置になっていた、というのも面白い視点でした。しかし腹を刺されても元気な仙堂にはちょっと笑ったな。真犯人がギリギリで時効適用内に逃げ切っていたかと思いきやギリギリで時効適用外だった、という展開も拓巳と牧村の復讐の着地としてはいい意味で無難で良かったと思う。一方でエピローグでは仙堂は戸田に刺されており、作中ではほぼ語られなかったまだ若い戸田の人生の救いのなさが遣る瀬無くなったりも。しかし戸田に始まって戸田で終わるんだなこの映画……。