ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『スノー・ロワイヤル』感想

ブラックユーモア満載で、噛み合ってるんだか噛み合ってないんだかよく分からないシュールな映画だった。要するに変な映画なんだけど私は好き。勘違いが勘違いを呼び、それが更なる勘違いを呼び、そうして復讐に次ぐ復讐が捻れていくのが面白い。だからといって混乱することもなく、基本的には「息子を勘違いで殺されたネルズ、勘違いの末に息子を誘拐されたバイキング、息子を勘違いで殺されたホワイトブル」の三つ巴でシンプルなのが良い。そんな中、息子の死に関わった人物を一人一人殺しては毎回金網で簀巻きにした死体を渓谷に投げ捨てる律儀な主人公とか(人を殺すと死体の処理がたいへんだということがよく分かる映画でもある)、人が死ぬたびに墓碑銘がいちいち表示される演出とか、強烈なキャラクターで笑わせてくれる麻薬組織のボスとか、笑える要素が大量にあってそれらが滑ることもなく効いている。ネルズが殺された息子の確認のためにモルグに行き、スタッフが死体を乗せたストレッチャーを長々とキコキコ言いながら適当な位置まで上げる序盤のシーンでもう笑ってたもんな私。いやもうずるいやろあんなん。

それでもネルズは基本的には真面目でシリアスなんだけど、先にも書いたようにバイキングの陣営が面白い。麻薬を売り捌くくせに息子の食事には偏執的なまでに拘るところとか、妙に馬鹿馬鹿しい部下とのやり取りや情報提供者との取り引きとか、とにかく見ていて飽きないんよね。トム・ベイツマンが生き生きと演じている。作中で一番輝いてました。そんなバイキングの部下もキャラクターが立っていて、デクスターが毎回口答えをして(でも言ってることは真っ当ではある)バイキングの中でイライラが明らかに溜まっていくのがヒヤヒヤするけど面白いし、そのデクスターの恋人であるマスタングがデクスターを殺されたことでバイキングを裏切るのが最高。息子のライアンが聡明でいい子なだけに父親を亡くした後の彼が気がかりではあるけど、あんな父親の元にいても幸せになれるとは到底思えないので、母親のところにいられるようになるのなら良かったのかもしれない。あとネルズとの擬似親子っぷりが可愛かったので、もう少し二人の時間を見ていたかったな。

ホワイトブル率いるネイティブ・アメリカンの陣営に関しては、とにかく先に『ウインド・リバー』を見ておいてよかったなと。バイキングの一味ほどの強い個性はないけど、インド人に死体処理を押し付けたりホテルの受付に絡んだり雪の中ではしゃいだり、あとはなんつってもパラグライダーに乗ってたアバランチの事故があんまりにもあんまりなラストで笑っていいのか分からんけど笑ってしまった。悪趣味!