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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『マジェスティック』感想

いい映画でした。記憶喪失という定番設定ながらも、記憶を失って別の男に間違われたまま新たな生活を送る主人公と、そんな主人公に希望を見出す町の人々との交流が丁寧に描かれているのが良かった。町の人々はみんないい人だし、ピーターとアデルのロマンスも微笑ましく見ていられた。と同時に視聴している私は記憶を失った主人公の正体を知っているので、後々のみんなの落胆が想像できてやるせなくもなった。でもやはり薄々ピーターの正体を察していた人はいて、それは恐らくアデルやエメットだけではなかった。きっとハリーもそうだと思う。でもエメットも言っていたように、ローソンという町そのものが「ルークという英雄の復活」に縋っていたかったのだろうと。実際、戦争で多くの若者を失って哀しみに沈んでいた田舎町が、ルークの帰還を機に活気付いていくところはめちゃくちゃ良かったんですよね。だからこそラストの聴聞会でのピーターの演説が熱く、ルークとして町の人々との交流を経たことで不思議な説得力が生まれたのだと思います。ローソンの町のみんながピーターを今度は「ローソンの町を救った英雄」や「聴聞会で屈しなかった英雄」として迎え入れるラストもぐっと来る。

コミカルな演技の印象が強いジム・キャリーの誠実な演技も素晴らしかったけど、ハリーを演じたマーティン・ランドーがまたいいんだよな……。ハリーが死ぬ間際に、ピーターが脚本を担当した映画を「いい映画」と言うのが好き。直前にピーターが記憶を取り戻していたことが運命的ですらあるし、結末が見られないことを悔やむハリーにピーターが教えるところもいい。この時の「善玉の勝利」を喜ぶ二人のやり取りが、ラストでピーターが自由を訴えて勝利をもぎ取ったというところで効いてくるのも素晴らしい。