原作の内容はだいぶ忘れたしアニメ版のキャストには思い入れがないからか、キャスト変更や批判されていた上映前の情報の出し方の問題も含めてネットでの炎上は遠くからぼんやり眺めているような距離感だったけど、そんな私が見に行っても面白かった。オープニングからすでに格好良かったもんな。繊細かつ力強い井上雄彦の絵はアニメーションとして動かすにはかなりハードルが高い印象があったけど、この映画ではしっかり再現された上でリアルに動き回るのがすごい。CGアニメにはいい印象がなかったけど、この映画でそうした偏見をぶち壊してもらえた気がします。井上雄彦が何故CGという手法を採用したのかが、見終わった後だとよく分かる。選手の動き一つ一つの密度が濃いし、バスケはほぼ見ないので「原作のあのシーンは実際にはこんな動きだったのか」という気づきもたくさん得られたし、そうした原作との擦り合わせも楽しかった。ゴール下の攻防も熱い。選手がコートの床を両手でバン！と叩くのも好き。映画を見ている間は私自身も会場で試合を見下ろしているような錯覚に陥ったほどで、映像は文句なし。今後のCGアニメはこの作品が一つの基準になっていくのかもしれないな、とも。
あと改めて思ったのが山王戦のストーリーの素晴らしさで、とにかくドラマティックで映える。名シーンを全部拾い上げるのは無理だろうし見たくて見れなかったシーンもあったけど、エピソードの取捨選択に関しては井上雄彦が監督や脚本をやっているから信頼していたし、実際に満足度は高かった。原作では他の四人に比べると掘り下げが浅かったリョータを主人公にしたのも面白いよね。改めて見ると、湘北というチームにとってリョータの存在が如何に大きかったかがよく分かる。あとリョータを主役として見た時の、原作の主役である花道の心強さが印象的でした。「左手は添えるだけ……」に音声がなかったのもいい。ベンチにいるキャラクターも熱かった。花道にみんなが念を送るシーンは最高。山王も湘北ほど掘り下げられてはいないのに存在感は抜群で、河本に圧倒される赤木、沢北に煽られる流川、とそれぞれの対決も盛り上がる。ああでもやっぱり「沢北じゃねーか……どあほう！」は見たかったな（仙道が一番好きなので）。
映像には驚かされたけど、音楽の使い方や無音の演出はベタだった。でもそうしたところも含め、「ストレートな『スラムダンク』の映画」になっていたのが良かった。試合中に何度もリョータの回想が挿入されるのでここは意見が分かれそうだけど、ずっとコートの中を見せられてもちょっと疲れそうなのでこれで良かったと思うな私は。
