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『すずめの戸締まり』感想

新海誠の作品を見るのは初めてだけど、ネットなどで受動喫煙していた情報から、美しい演出とドラマとアニメーションのクオリティで殴ってくるタイプの監督かな、と予想してたらだいたいそんな感じだった。私の周囲ではこの映画は賛否両論のようだけど、曖昧なところはありつつもエモーショナルな作劇に素直に浸れたこともあり、私は思った以上に楽しめました。「廃墟に佇む扉」という画もいいし、タイトルインの演出も格好良い。声優はみんな合ってたし、一人残らず好演していたので印象がいい。予告でも使われていた「すずめ」もいい曲でした。歌い出しの「ルルル」が頭から離れなくなる。

地震発生のメカニズムが実際のものとは違うので、そこも含めた上の「ファンタジー」というジャンルなんだろうけど、「震災は止めないと多数の犠牲者が出るけど、止めるのにも犠牲者が必要になる」という不条理が『すずめ』の世界にもある。だから終盤は要石に戻ろうとするダイジンに泣けちゃったな。ダイジンは神様だから本来の役目に戻ったということなんだろうけど、草太のおじいちゃんの話からするとダイジンやサダイジンも元は人間で、そこから徐々に寒い場所で長い時を過ごしてあの姿になったのかもしれないな、とか考えちゃうよな。しかし閉じ師って何人いるんだろう日本には。さすがに草太だけではないと思うけど(もし血族だけなら、草太も教師と並行してやっていこうとは考えないと思う)、多くはなさそうなんよな。今回もダイジンたちの導きがあって辛うじて、みたいな感じだったものな。

ロードムービーとしての側面もあったけど、終盤の実家に向かうドライブでの鈴芽、環、芹澤、ダイジン、サダイジンという組み合わせは「どうしてこうなった」感があり、これはこれで面白かった。特に芹澤は美味しいキャラクターだったなと。あと環さんは鈴芽を心配する保護者としての行動力(この手の作品の保護者は子供を放置しがちだと思うので余計に)と、母親を亡くした子を育てた者としての生々しい感情の決壊シーンが印象的でした。道中に会った親切な人たちに、環さんともう一度会いにいくエンドロールも好き。焼きうどんにポテサラという組み合わせには「?」とはなったけど、見終わった後は試してみたくなった。

しかし女子高生が新幹線代をパッと出せるのが今時だった。スマホの交通ICが口座と紐付けられているから旅費も出せるし、環さんも鈴芽の居場所が分かるようになる、という流れにしみじみしてしまった。